7thB.V

□鳥籠のヒナ
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かつての聖女と私が作ったものは、ヒトであってヒトならざるものだった。





*鳥籠のヒナ



骨を砕いた粉、土と、血。

それらで出来た二つの存在。

琥珀色の瞳と、緋色の瞳。

その両方は、かつて私が作ろうとしていたフレデリックとは大きく違って幼いものだった。
何も知らないその二つを、私は育てた。

興味本位で始めた事だが、いつしかそれらの成長を楽しんでいる自分がいた。
ヒトの子と大差ないほど、成長した琥珀の瞳。
レナと名づけられたその子。
もうの緋色の瞳は、暗い場所で餌を与え続けられるだけの存在だった。
名前すらないその存在は、いずれの時のためだけの存在。


「あ、あぁ……」

「あの子。まだ、餌を上手く取れないみたいなの」


血に塗られた女が言う。
痩せこけた身体で、緋色の目だけが爛々と輝くソレが、口を開ける。
適当に放り込んでいた餌は、そこから逃げ出そうとしたようで、檻の中でもがいていた。
考えれてみれば、まっさらな存在のソレがどうするのかを知っているわけもなく、今まで何も口にしていなかったことに少なからず同情を寄せた。
血に濡れたこの床を見れば、本能的に餌を仕留めたことは見て分かった。
折り重なった多数の死体は、己が運んだものばかり。


「…ア……ァ……」

「せっかく作ったのに、死んでしまっては元も子もないでしょ」


折れそうなほど細く、白い腕がこちらに伸ばされた。
アーシュラが見せる顔は、レナに見せる顔とは違っていた。残忍で、魔女の名に相応しいその女は、そう言い残すとその場を去っていった。
血に濡れた目が此方を見つめる。その縋るような目に、私はため息をついた。
おそらく、自力で血を啜る事は今の状況ではもう出来ないだろう。


「仕方がない……」


伸ばされた腕を引き寄せる。思った以上にその身体は軽かった。おそらくレナの半分ほどの重さしかないだろう。


「ア゙ァアア!!」


バタバタと手足を動かして暴れるソレを押さえつけた。赤く長い舌が首に伸ばされる。
その舌を掴むと、パンッと頬を叩いた。爪が当たったのか、白い頬に赤い線が走る。
小さく力をなくしたその身体ではその程の力はないが、暴れられるのは面倒だった。


「まったく……」


面倒なものを押し付けられたものだ。今ので体力を使い切ったのか、大人しくなったソレは、だらりと赤い舌を伸ばして荒い息をしていた。
薄汚れたブラウンの髪を持ち上げる。それでも赤い目はこちらを睨みつけていた。
小さな赤い唇に、赤い舌を潜り込ませる。見開かれた目が、反射的に暴れようとする。丸い頭を片手で押さえ込んで、血を送り込んだ。

ドクドクと、波打つように小さな身体が反応する。
強制的に注ぎ込まれるのが辛いのか、赤い目から涙が零れた。
十分な血を注ぎ込んで、唇を離した。


「本能のまま、首を狙えば良い」

「あ……うぅ…」


ぐったりと小さな身体から力が抜けていく。満たされた事で、身体が休息を求めたのかもしれない。緋色の目が重たそうに、まばたきを繰り返す。
幼子と同じように、とろんとした目がこちらを見る。やがて、すぅすぅと寝息が聞こえる。血の気のもどったその顔は、レナにとてもよく似ていた。
頬を伝う涙を拭ってやると、ソレは小さく身じろいだ。


「眠りなさい」


この暗い鳥籠から出られない哀れなヒナ。
もう一人のヒナとは違い、愛情も、友ももたないヒナ。
ただ、本能のまま、狂い続けるだけの存在。


「まだ、その時ではない」


はたしてその時が来たら、どんな結末になるのか。
それはまだ分からない。


「哀れな私のヒナ……」


鉄の鳥かごの中に、ソレを寝かす。
小さく身を丸めて眠るソレ。
きっと、次目を覚ました時、血を求め自ら餌を襲い食らうだろう。

その時がくるまで、私は餌を与え続ける。



End


あ、あれ? なんか、思ってたのとまったく違うものに……
なぜか、シリアス(?)な感じになったよ←
どうしよう、シルバラさん(名前出しちゃったwww)
今回のネタだしは、シルバラさんです←←
「アーウィンが子影レナにベロちゅー」……まあ、違いはない←←←
本当は、ほのぼのーな感じにしようと思ってたのになぁ。
傍から見たら、幼児虐待なアー様www
これって、アー影レナですかね?







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