7thB.V

□代役でも
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月の光を浴びて、湖面はキラキラと輝いていた。レナの白く艶めかしい肌に比べたら見劣りするものだったが、それはそれで綺麗だった。


『どうして、こうなったんだろう』
湖面から顔を出して懸命に自身の腕を掴むレナを見て、フレディは思った。
最初は幼い顔つきのレナに似合わない、やや際どい水着姿に戸惑いを感じたが、気にならなくなってきた。
いや、気にしないようにしないとやっていられない。役得だと思わないと、思い込まないとやっていられなかった。


きっかけは、レナの言葉だった。
「泳ぎを教えて欲しい」
彼女はマシューという名の友人から、泳ぎを教えてもらう約束をしたらしい。しかし、それは果たされずに終わった。
マシューは死んだ。
リズも死んだ。
全てが終わった。
それでもレナは、諦めようとしなかった。
約束を守ろうとした。
自分が彼女の友人の代役になっていると理解していても、断ることは出来なかった。健気な彼女の願いを叶えてあげたかった。
完全に叶えることは不可能だと知っていても。


自分は彼女の友人の代役にすぎないという想いが、考えが、自分を潰してしまいそうだった。
本来ならばレナを湖面から引きずり上げ、押し倒したい衝動に駆られるが、頭の中がぐちゃぐちゃしていて、行動に移せない。
そんな自分を意気地ないと思いつつ、それでもいいと思っていたりもする。代役だろうと、レナのそばにいられるのだから。
例え自分の負の感情に押し潰されたとしても、レナと離れることに比べればどうでもいいことだった。


レナは時間はかかったが、徐々に泳ぎを覚えていった。
元々遊び程度に水泳など関係ないのだが。優柔不断なわりに頑固なところもあるレナは、頑なに泳ぎを教わりたがっていた。
湖のそばで座り込んで、フレディはレナに話し掛けた。
「ねぇちゃん。もう大丈夫だね」
勇気を出して言葉を繋ぐ。
「今度は、昼間に泳ぎに来ようよ。その…ねぇちゃんの友達、の代わりには、ならない……けど」
勇気を出したはずなのに、言葉は途切れ途切れになり、声は小さくなっていく。
レナはきょとんとした顔を見せた。そして微笑んだ。
「もちろん。一緒に泳ごうね。私、フレディと一緒に来たいもの」
レナの素直な回答と笑顔に、フレディは自身のぐちゃぐちゃとしたぐるぐるとした負の考えが消えていくのがわかった。
「そうだね」
そしてフレディはレナの肩に腕を回した。
回していい気がした。
レナがその身を預ける。
本来ならば体温を感じないはずの央魔の身体だが、温かみを感じた。


終わり



リク?頂いたので書いてみた。
好きにしてもいいと聞きつつも一応は非エロ定番でいこうかしらと。
柚那さん、これで許して。





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