7thB.V

□クリスマスには
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レナと同じ相貌で、唯一違う赤い目が、不思議そうに机の上を見つめていた。


*クリスマスには



真っ白で甘いにおい。好奇心に満ちた赤い目が手を伸ばす。

「まだダメ」

レナの声に手を引っ込める。ぷくりと膨らんだ頬に、レナはふふと笑った。

「もう少しでできるからね」

白くて甘い上に、苺がたくさん乗った。

「ほら! ケーキできたよ」

「けーき?」

聞き慣れないその名前に首を傾げる。
レナはぱちりと瞬きすると、ボールに残っていたものを指で救う。
その甘いにおいに、レナの指ごとぱくり口に入れる。口の中が、ふわんと優しい甘さが広がる。

「くすぐったいよ」

あまりにもおいしいかったから、指をそのまま舐めていたらレナは少し困ったで、もうと言った。

「ケーキ、気に入ってくれたみたいだね!」

レナの手が、頭を撫でた。

「ローソクも立てちゃおうか」

レナはとても楽しそう。
このケーキは、甘くてふわふわしてとおいしい。こっちまで楽しくなってる。

「もうすぐ、フレディとアーウィンも帰ってくるから、それまでお預けだけどね」

すぐにケーキを食べられるかと思ったのに、ぷうと頬を膨らます。

「もうだから、ね?」

レナがそう言うならば仕方がない。人間よりも嗅覚が優れた冥使の二人には、遠くのにおいでもよく分かる。
レナよりも先に冥使になったはずなのに、フレディのにおいはレナの方が敏感みたいだった。

おもしろくない。

「なんで膨れるの?」

「しらない!!」

ケーキに乗ったイチゴを口に放り込む。
甘酸っぱくて大好きな味は、いつもより酸っぱい。

「あ、こら!!」

ついでに生クリームも指で掬って、ぺろりと舐める。イチゴより甘いその味は、イチゴの味と混ざり合う。

「もー、まだ食べちゃだめ!」

「イヤ!!」

「クリスマスはみんなでケーキ食べ――きゃあッ!?」

レナが手首をつかんだまでは良かったが、座っていたイスが傾いて、そのままイスから転がり落ちる。
レナまで巻き添えにして、気がつけばレナを下敷きにしていた。

「い、たた……」

「れなぁ…ゴ、メン…」

見下ろしたレナに謝る。
琥珀色の目が丸くなって、クスクスと笑った。

「クリーム付いてる」

ほっぺたをするりと撫でて、レナは顔に付いた生クリームを掬う。

「ね、もうちょっとだけ待ってよ?」

指に付いた生クリームをぺろりと舐める。

レナの笑顔は、とても可愛くて大好き。

レナに抱きつく。
ふんわりと甘いにおいがした。

「重いよーどいてよ」

「いやー」

抱きしめてころころ転がる。レナは可笑しそうに声をあげて笑った。
そのまま転がっていると、トンと机の脚に背中が当たる。

「ふっ、あははは!」

「きゃははは!」

顔を見合わせて笑っていると、ようやくフレディとアーウィンが帰ってきた。


「レナ……何をしているんですか…まったく」

「ただいま! って、ねえちゃんたち服汚れるよ?」


机の下に転がり込んでしまったのを、フレディとアーウィンは覗き込んだ。
呆れたような二人の顔に、ぷくりとレナと影の頬が膨れる。

「せっかく待ってたのに! ケーキは二人で食べちゃお!!」

「え! オレの分は!?」

「フレディの分はなしでーす!」


ねーと顔を見合わせて二人で笑った。

クリスマスは、よく分からないけれど、あのケーキはおいしそう。
レナも楽しそうで、こっちまでワクワクする。


「Merry Christmas!!」


覚えたての言葉。
あたらしい言葉と物が増えていく。

もっともっと、レナと一緒なら、楽しい言葉を覚えられそう。



end



久々の7血
久々すぎて、短いくせにやけに時間かかりました……

冥使に聖夜とか絶対祝いそうにないけど←

改めて、メリークリスマス♪

クリスマスっぽくないな……


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