包帯かづき

□第壱話
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「ひっく……ひっく…ぐすっ」


真っ暗闇の中、一人声を押し殺して泣いている子供がいる。

体育座りで顔をうずめているその子は気づいていない。この部屋にもう一人の人間がいることに。


「どうして泣いているんだい?」


突然聞こえた声。独りぼっちでいることの寂しさに、誰とも知らぬその声に答える。


「…僕は生まれてこなかった方が良かったのかな?生きてちゃいけないのかな…」


「そんなことないよ。俺は生きていてほしいよ、キミに…だからもう泣かないでよ」


そう言って頭を撫でられる。それがとても気持ちよくて、暖かくて。


「うん…」


とても安心する。ずっと泣いていたせいか、一旦落ち着くと急に眠気が襲ってくる。


眠りに完全に落ちる前、ちらっと声の主の顔を見たような気がするがどんな顔であったのか子供は覚えていない。






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