歌パロ短編
□アンチクロロベンゼン
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血ばかりの空間で少年は空を見上げていた。灰色の空。
「……悔しい」
苦しくて、悲しくて、悔しくて…。
それすらもボクにはゆるされず、何もかもを捨て、何もかもを失った。
それが辛くて、憎すぎて、虚しくて、消したくて
…こんなことを考えるくらいなら、
全部捨てて喚き叫びたい!
「…匠さん…」
「ん…?あ、えっと…」
「彰です。舞原彰。」
彰と匠は、対峙していた。
クラクラしそうな真夜中の薄暗いネオン街。二人はなぜかそこにいた。
「彰か。ごめん…。さて、楽になりたいんだっけ?」
匠は彰の口を人差し指でなぞった。
彰は身を震わせたが、抵抗などもしない。ただじっと、匠を睨まず見ていた。
「…委ねれば、問題ない」
匠がそう言った瞬間。彰はなにかを悟るように匠を振り払い匠からはなれ真夜中の街に消えていった。
何も知らない君は、ただ走る。
…匠はただ何もいわずそれを見ている。
たくさんの言葉をならべてもゴールなんてものは見えない。
それにルールさえもそこにないから…。
全部、ボロボロと脆く朽ち果てていく。
「この世の全てを正すんだ」
匠は呟く。
「ボクなら、全てを正せるよ?」
近くにいた野良猫に匠は言った。
出来もしないのに、その誓いを振りかざす。