慈狂の花束
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「じゃ、行こうか」
苅野は夏樹と少し距離をとりながら歩きだす。そして、5分後。
夏樹は苅野の耳元で怖いほど優しく、低い声で囁いた。
「夏樹をけがしたのは…お前だろ?」
「!?」
苅野は身体を震わせた。夏樹はそれを見て笑いだし、そしてすぐ苅野の胸倉をつかんだ。
「苅野託麻…貴様だろ?」
「夏樹くん…どうしたんだ?」
苅野は夏樹の手をつかむ。しかし夏樹は全く同じない。そして、夏樹は続ける。
「夏樹の身体をけがしたのはお前なのかと聞いている。全く…」
苅野は理解できないともいいたげな顔で夏樹をみる。そして、夏樹は言った。
「その口で夏樹の名前を呼ぶな。そして俺は由良冬樹だ。夏樹の双子の兄…。夏樹と違いもわからないとは。」
「…っ、なにをしでかすつもりだい」
「縛って殴って警察につきだして慰謝料100万払ってもらってから死んでもらう」
夏樹…いや、冬樹は一気に息継ぎなしでそういうと苅野を一発殴り掛かる。
しかし、苅野はそれをかわし冬樹をもかわした。
「くっ」
「いつまでそう言える余裕があるかな」