慈狂の花束
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「由良っ!」
「ふえっ?!」
「何ボケッとしとんのや。学業集中せいな…」
「す、すいませんっ」
由良夏樹、高二。唄音と同クラスの生徒。中学三年生の時、中途半端な時期に転校してきた少年。その時も唄音と同クラスで、唄音が初めて話しかけてくれた女子生徒だった。
「はは、築山先生の授業でボーっとしてんのなんてあなただけだよ夏樹」
「唄音ちゃん…」
「あ、これ終わったら私夏樹に聞きたいことあるから」
唄音は振っ切るようにいうとすぐノートに目を向けた。
夏樹も教員に目をむけながらノートに黒板の文字を写す。
そして左手を僅かにみて、築山の授業に耳を傾け勉強に集中しはじめた。
夏樹は比較的控えめな性格。そのうえ人見知りも激しかったものだから。
そしてなにより彼に大きな影響を与えていたもの…。
虐待だった。
それだけではない。彼は精神的にも追い詰められ、売春にさえ手を染めていた。