慈狂の花束
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「きゃああああ!」
「通り魔だ!通り魔が出たぞ!」
「うあああっ!」
―通り魔―
この街で今1番危ない事件の人物また事件のこと。
その通り魔が、いきなり活動を活発にさせた。無作為に老若男女関係なく。
夕闇に紛れる白い肌を持つことから、通り魔は「白き悪魔」なんていう通り名をつけられた。
「ったくさぁ…馬鹿げてる」
通り魔は目の前の幼い少女を優しく抱きしめる。少女は恐怖を宿した瞳で通り魔を見つめた。
「大丈夫、君は悪くないから…早くお逃げ。」
「なんで…―――お兄ちゃん!」
「…僕は君を知らない。」
「お兄ちゃん!ねぇ…!」
「…早く逃げて。早く。僕が君を殺めるまえに」
「あやめる…?」
少女は通り魔を不思議な目で覗きこむ。
少女は通り魔を知っていた。知り合いだった。通り魔の正体を知っていた。
通り魔の正体。
大好きな、大好きな…
「彰お兄ちゃん」