慈狂の花束
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「紅葉祭……?」
「君のところにも届いただろ?由良夏樹から。」
暗闇のなかで、視線と視線が交差する。穏やかな風は吹かぬまま、肌寒さが残る部屋のなかで二人は見つめ合っていた。
「きたけど…僕がいっていいのか「はなさなければ大丈夫。」匠さん…」
病室にいたのは舞原彰。そして、瞳に真偽の色を持つことさえもわからない少年佐倉匠。
彼の瞳は、誰をも冷酷にさせる。
それからだろうか?彼の瞳を見た者はいない。
「僕は怖いんです」
「…なにが?」
「武内先輩を、殺めてしまうような気がしてしまうんです。…僕は…二年前の通り魔犯の弟ですから」
「…!」
「兄は、16人の犠牲者を出し自ら命を絶ちました。母の怒りの矛先は僕にむかい、僕が通り魔としてすごすことになったんです」
彰はこともなげに匠に話をつづける。
匠が、彰の知り合いのように…。
そして彰は言った。
「僕はあなたとあえて嬉しい。…兄さん?」
「彰…!」
「…いますぐにでも…殺してやりたい」
彰の真意は、わからない。
しかし匠に向けた瞳はあきらかに憎しみと怒りを含めていた。
匠の長い髪が揺れる。彰はそれをみてにこりと笑いながら残虐な言葉を投げた。