慈狂の花束
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午前6時08分。
時間通りに起床した大和(ヤマト)は制服に着替え一階に降りた。いつも通りの風景。
…違う。姉である唄音(ウタネ)がいる。
珍しい…。
唄音は大和に気づき手招きする。すると大和は穏やかにほほえみ唄音と向かいあわせの椅子にすわる。
「おはよう大和」
「はやいね唄音。珍しい」
「ふふっ。なんか目が覚めちゃってさ」
悪戯っぽく笑う唄音は、そこからなんとなく大人の女性という雰囲気をだしていた。だがそんな唄音は大和より三歳年上の高校二年。よく間違えられたりするのだ。
大和は中学二年生。それなりの方だが、華奢な身体つきであるのは自覚済み。
「あぁ、そういえば見た?」
唄音はテレビを指差す。そこには真面目なかおつきをしたニュースキャスターがニュースを読み上げている。
『昨夜、午後10時頃、東京都の××市で通り魔の事件がありました。刺された方は…』
「…隣の市?」
「そう。怖いよね…気をつけてね、大和。」
「まんま、唄音に返す」
二人は、中高一貫の学校にかよっている。ほとんど学校は一緒に行っている。
わざわざこの学校にくるために引っ越す人も少なくはない。
進学校として有名な中高一貫校こと、黄燐学院。