慈狂の花束

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「ジャッカランタ咲いた…」

大和が歌っていたのは、ハロウィンの歌。季節外れの歌だが、大和は大好きだった。少しでも気分を紛らわせれば。

30分後。

「大和ー、お風呂…」

唄音が、大和を呼びに部屋に入る。
しかし。

「大和…?」

虚空という言葉がしっくりくるかのように、静寂さにつつまれた大和の部屋。
音楽はかかりっぱなしで、まるで神隠しにあったかのような違和感。
…大和の姿は、なかった。

「大和!?」

ケータイで連絡をとろうとすると、大和の机の上で震えるケータイ…
大和はケータイを置いていったのか?

「大和っ!」

コートを羽織り、唄音はケータイを片手に自転車に跨がる。
時刻は夜の8時30分。
大和が何処にいったのか探そうとした瞬間。目の前から一人の少年が現れる。
唄音は何度か面識がある人物。

「悠斗くん!」

「唄音さん…。大和を」

悠斗は、背中に大和を背負っていた。それを見た唄音は大和に近づき「大和」と声をかける。大和は穏やかに寝息をたて寝ていた。それに気づいた悠斗はくすりと笑いながら静かに呟いた。

「大和くんは…フウヤにそっくりだな」

「…フウヤ?」

「あ…ううん。なんでもないです。大和くん、お大事に」
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