慈狂の花束

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本当に赤ばかりで、血みどろで何があったのかもわからなくて。私の足は無意識にリビングに近づく。そこには、私の父親がいた。父親が倒れていた。…倒れている?

チガウ。…え?

「っ…!!」

死 ん で い る ん だ !

「い、や…いやああああ!」

「いってはいけないよ」

嘘よ、嘘…父さんが、父さんが…
カグラくんは私を優しく抱きしめる。カグラくんは殺してない。懐かしさはあるけど、なぜ彼が父さんを殺さなければならないのかわからなかった。
それに、大和に知らせたらどうなってしまうのか。

「…あぁ、ごめんね唄音…ボクはさ…」

…そこから先、カグラの言ったことに私は驚いた。それと同時彼らをどうしたらいいかというのにも考えはじめた。
カグラは「嫉妬」という劣等感の塊により私の父親を殺した。「嫉妬」だけじゃない。私を苛むものや虐げるものすべてを否定(こわ)すようにみえた。
それから私は人を愛するのをやめた。
大和が殺されないように。カグラが大和を殺さないように。嫌だった。カグラが私から持ち去るのを。
カグラは私の母も殺してしまった。


…ねぇカグラ。
あなたは私の何を知ってるの?
あなたは大和の何を解っているの?
…どうか教えてよ…。

優しく抱くカグラの身体を抱き返し、泣き叫んで闇の中に見を埋めた。
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