慈狂の花束
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授業がおわり、唄音は騒がしい教室の中でコソ、と夏樹に耳打ちしてくる。
「夏樹、その…虐待うけて…ない?」
唄音がそう言った時、夏樹は顔を青ざめさせた。それと同時、怒りににた何かが彼の中で蠢きはじめた。
「…なにいってんの?大丈夫だよ」
「…だって。…怖かったの。夏樹が」
「僕が?どうして?」
「…いつか、その身体がボロボロになるんじゃないかって。」
その言葉を聞いた夏樹は、唄音を思いっきりひっぱたいた。
騒がしかったクラスも、その音で静かになる。そして夏樹は続けた。
「お前なんかに僕のなにがわかるんだよ…わかんないだろ!」
「夏樹っ、落ち着けっ!」
背後から、夏樹を数名の男子生徒がおさえる。唄音は夏樹を静かに見て優しく笑う。
「わかるよ」
唄音は真剣そのもので夏樹を見つめた。
「私と夏樹は似ているの」
唄音はそう言うと夏樹を男子生徒から解放し、夏樹に優しく微笑んだ。
またクラスは騒がしくなる。ここに教員がいなくてよかったなどと思いながら唄音は本を開き小説を読みはじめた。
「…くっ」
夏樹は小さく舌打ちをして次の授業の準備をして、顔を机にむかってさげた。