慈狂の花束

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「ごめんなさい、待たせてしまいましたか?」

夏樹は男性に近づく。男性は20代前半だろうか。若い顔立ちで優しそうな青年だった。

「ううん。大丈夫。えっと…夏樹くん…だっけ」

夏樹は小さく頷き、少し距離をとった。
男性は夏樹に言う。

「俺は苅野。今日はよろしく」

夏樹のいまからする行為。
己を傷つけるために、自分の少しもの居場所をみつけるためにしていた、売春という行為。

苅野は夏樹の肩を抱きよせる。
夏樹は反射的に苅野の手をたたき落とす

「やめ…!」

「あ、ごめんね」

苅野は一見優しそうなのだが。
「夏樹」は知ってる。夏樹のケータイには、これは本当に苅野かとは思えないようなメールがたくさん入っていたから。

ましてやこんなことすれば何をされるかわかりはしない。
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