Hello 第2章 

□忠告
1ページ/8ページ

『ただいま〜』



宿舎の玄関に入ると
僕とミノ以外のメンバーは
既に帰宅していた。



バラエティ番組の収録が
僕とミノの2人だったから
今日1日、メンバーとは別行動。



リビングにはキボムとジョンヒョンが
ソファーに座ってそれぞれ何かしている。



「あっ、おかえりオニュヒョン!!
あれ、ミノは?」



キボムは僕に気付くと読んでいた雑誌を置いて
キッチンへと夕食の支度をしに行きながら
尋ねる。



『ミノはチャンミニヒョンと
ご飯の約束してるからって
途中で分かれた』



後からキッチンに入ってそう伝えてから
冷蔵庫の水を取り出すと一気に飲み干す。



『おっ、今日はテンジャンチゲ!!!』



温めている鍋を横から覗き込んで
美味しそうな匂いに思わずお腹が鳴る。



「先に手洗って来て!!」



お母さんみたいに言うキボムに
は〜いと素直に返事をして
洗面所へ向かう。



キッチンへ戻ると既に夕食が用意されていて
直ぐにダイニングテーブルに着く。



『いただきま〜す』



モグモグ



「今日の収録はどうだった?」



キボムは向かい側に座ると
コーヒーを飲みながら聞いてきた。



『どうって…楽しかったよ』



一言だけ返事をして
またご飯を食べ始める。



「えっ、それだけ!?
他に言う事とか無いの!?」



それだけって言われても。。。



テンジャンチゲを食べながら
今日の収録を思い出す。



今日のバラエティ番組は屋外のロケで
リゾートホテルのプールサイドを貸し切って
沢山の出演者と色んなゲームで勝負をした。



女性アイドルグループも多数出演していて
お決まりのアイドル同士のカップルにもなったけど。



う〜ん。。。やっぱりいつもと同じだ。。。



『いつものバラエティ番組と大差ないよ』



キボムに言われて考えてみたけど
特に変わった事は無かったから
それ以上キボムも聞いてはこなかった。



「今日は誰とカップルになったの?」



リビングのソファーから
ジョンヒョンが身を乗り出して
こっちを見ている。



『え〜と、After Schoolのリジだよ』



一瞬、驚いた顔をしたジョンヒョン。



「へ〜、リジか…」



他に何か言いたそうにしていたけど
結局その後は何も言わずに
またテレビに向き直った。



何だろう。。。



ジョンヒョンの表情が少し気になるけど
特に聞き返すことはせずに
またご飯の続きを食べ始めた。



「あのさオニュヒョン…
名無しさんヌナにはこういう事って
話したりするの?」



少しの間の後、不意にキボムが聞いてきた。



こういう事。。。?



キボムの意図が分からずに首をかしげる。



「つまり…仕事で女性アイドルと一緒だったりする事」



あっ、そういう事か。。。



キボムの言いたい事が分かって
これまでの名無しさんヌナとの会話なんかを思い出してみた。



『んー、特に話した事は無いけど
名無しさんヌナからも聞かれないし…』



それを聞いて少し考えてる様子のキボムは
心配そうな顔つきで僕に言う。



「全部は話さなくてもいいけど
今日みたいにカップルになったのとかは
一応言っといた方が良いかもよ!?」



キボマってば大袈裟だな。。。



必要以上に心配な様子を見せるキボムに
笑って答える。



『大丈夫だよ!!だって仕事でやってるだけで
本気じゃないのは分かってるだろうし』



何故か腑に落ちない顔で僕を見る。



「だったらいいけど…」



それだけ言うとすーっとリビングから出て行った。



心配してくれてありがと。。。



キボムが消えたリビングのドアを見つめて
心の中でつぶやいた。



残りのご飯を口に運びながら
ふいにキボムの言葉が頭をかすめる。



正直、歌手の僕にはどんな仕事でも
女性アイドルとの共演は付き物だし
だからと言って特に意識なんてした事無い。



確かに可愛い人や綺麗な人はいるけど
どちらかと言えば同じ歌手として
ライバルであり同業者としての親しみだけ。



それをわざわざ口に出して
名無しさんヌナに伝えるのは
かえって怪しい気がする。



けれどキボムが言うって事は
大事な事なのかもしれない。



『やっぱり、言うべきなのかな…』



ダイニングテーブルで独り言をつぶやく。



明日、名無しさんヌナに会いに行こう。。。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ