Hello 第2章 

□僕だけが知っている
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僕の首に下げた名無しさんヌナのバッグから
何とかカギだけを抜き取ると玄関を開けた。



玄関先の廊下にそっと下ろして
片方だけ履いている靴を脱がす。



両足が自由になったのを確認すると
名無しさんヌナはニコッと笑った。



「ただいま〜」



誰に向けての“ただいま”なのか考える前に
咄嗟に名無しさんヌナの口に
人差し指を当てる。



『しーっ!!!もう夜遅いから静かにね…』



あっという顔をしてペロっと舌先を出した。



立ち上がってふらつく名無しさんヌナを脇から支えながら
リビングのソファーにたどり着いた。



『ここで待ってて、お水持って来るから』



ソファーに座った名無しさんヌナをその場に残して
冷蔵庫の水を取りに行くと
直ぐにリビングへ取って返す。



『はい、これ飲んで』



コップを手渡すと素直に飲み始めたけど
半分も飲まないうちにコップを返してきた。



「もう、いらない…」



例え焼酎3杯しか飲んでいなくても
こんなに酔っぱらっているのなら
やっぱり水分は取らないと。



『ダ〜メ、ちゃんと飲んで!!』



そっと掌でコップを押し返した。



しぶしぶ残りを飲み出した時
飲みきれない水が数滴
唇の脇からこぼれ落ちた。



無意識にそのしずくを親指で拭う。



「ん…!?」



されるがままの名無しさんヌナは
不思議そうに僕を見上げた。



『こぼれてる・・・』



あっ、と言って自分の手で
もう一度口の横を拭う。



その仕草にふと思い付いて
名無しさんヌナに声を掛ける。



『ちょっと待ってて・・・』



急いで洗面所に行くと
タオルを熱いお湯に浸して堅く絞る。



これじゃ、熱すぎるかな。。。



リビングに戻りながら
タオルの熱を冷ました。



名無しさんヌナの前に片膝を付いてしゃがむと
おもむろに右手を差し出す。



「ジンギ君・・・!?」



名無しさんヌナは僕の手と顔を交互に見つめる。



『手・・・出して』



言われた通りに僕の掌に
右手をのせた。



僕は名無しさんヌナの右手を
タオルで優しく拭いていく。



『お酒飲んでるからお風呂はダメだよ。
その代わり手と足拭いてあげるから・・・』



そう言って名無しさんヌナを見上げると
嬉しそうに微笑んだ。



右手が終わると自然に左手も差し出してきた。



「拭いてもらうのって気持ち良いね・・・」



されるがままの名無しさんヌナを見てると
不思議な気持ちになる。



何だか今日は僕が年上みたいだ。。。



『はい、次は足ね・・・』



足を拭こうと右足を触ると
ヒンヤリとしてとても冷たい。



あっ、さっき靴が脱げてた足だ。。。



突然に思い立ってタオルを脇へ置くと
名無しさんヌナの脇とひざ裏に手を差し入れて
そのまま抱き上げた。
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