DREAM 恋海 シン
□始まり。
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「おい積み荷。」
「積み荷じゃありません!ジュンです!」
〈始まり。〉
面倒に感じていた積み荷に混じってこの船に現れた女はいつの間にか暇つぶしの玩具になっていた。
「シンさんの意地悪…」
ぶつくさ言いながら口を尖らせる仕草もいつ見ても飽きない。
くくっと笑うと、隣のドクターが微笑む。
「シン、最近機嫌がいいんだね。」
「…何がいいたいんですかドクター。」
言われて初めて自分の頬の緩みに気づく。
「ジュンちゃんが来てから船は明るくなったねー。」
ほのぼの言うドクターを横目に自分でも船の雰囲気、皆の変化を感じていた。
認めたくは無いが、自分の変化も…。
「シンさん、ソウシさん、お茶が入りましたよ!」
いつも笑顔でいるこいつに引っ張られつつある。
あの無口のナギでさえ口数が増えたし、ましてや誰も入れやしない<聖域>のキッチンにジュンだけは足を踏み入れていい許可が出ている。
「…美味い。」
喉をすっと通る。
一口、口にして手を止めた。
こんなにも自分の心に浸透してくる。
初めて、自分の心の隙間に意図も簡単に入り込まれたことに恐怖を感じた。
『船に面倒事は持ち込むな。』
誰かに向けてじゃなく、自分に釘を刺すために言ったのかもしれない。