DREAM 恋海 ナギ
□たからもの
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きっちんたいまー
何やらネジを巻いたら時間を数えてくれるという機械らしい。
「きっちんたいまー」
私はきっちんたいまーをじっと見つめた。
「憎っくきライバル。」
ナギに大切に大切にされているきっちんたいまー。
きっちんたいまーが来てからは、これがナギを独占している。
きっちんたいまーを睨みつけていると、きっちんたいまーがひょいっと誰かに持ち上げられた。
「なにやってんだよ」
「ナギ!」
はっと身構えると目の前にきっちんたいまーを大切に抱えるナギが目に入った。
今までだったら、私の頭を優しく撫でてくれるか、ぽっぺたをつついてくるか、私にちょっかいを出していたのに、今は大事に大事にきっちんたいまーを拭いている。
ジュンはそれを見て眉間にシワを寄せた。
「ナギ」
「なんだ?」
「ねぇ、こっち見て?」
「今こいつ磨いてるからちょっと待て」
最近はこの繰り返し。
不服は限界まで募っていた。
夜になり皆で晩御飯を食べる。
いつもは最後に食べ終わるジュンだったが今日は黙々と口に運び一番に食べ終わった。
「ごちそーさま!!」
まだ頬張りながら慌てて食器をキッチンに運ぶ様子は何か急いでいるよう。
ジュンはキッチンの流しに食器を置くと、コンロの横に置いてある奴と対峙した。
「ナギが悪いんだから」
それを掴むとキッチンから走り出て甲板に向かった。
大きく手を振り被り、海に向かってそれを投げようとした時、チンッ!っとそいつが鳴り慌てて胸元に持ってきて、それに向かって「しーっ」と人差し指を口許に当てる。
すると後ろからがばっと誰かに抱き抱えられた。
「うわぁっ」
驚きとバレたら殺されるという恐怖から持っていたきっちんたいまーを胸元から服の中に突っ込んだ。
「何企んでんだ?」
耳元で私に囁く声は今一番見つかりたくないキッチンの主。
「…あ、あはは。何も企んでなんかな…」
言い終わる前にナギの手が私の胸元から服の中に入ってくる。
「珍しく飯食うの早ぇし、食べ終わったら急いでどっか行きやがるし、怪しくて仕方がねぇ。」
そしてお腹付近にあった固い物を握られる。
「…これ、持ち出してどーすんだ?」
まんまと見つかり、ナギの手の中で満足そうなきっちんたいまーと自分を抱くナギの手に力が入ったのに気づき血の気が引くジュン。
「…だっだって、ナギは毎日きっちんたいまーきっちんたいまーって」
「お前、、これにヤキモチやいてた訳?」
きっちんたいまーは機械で思考も気持ちも無い、わかってる。
「か、数くらいなら私にだって数えっ数えれるもん」
機械にさえ、ナギに大切にされている事にヤキモチを焼き、そんな自分が虚しくって、切なくなって、子供のようにわんわん泣いた。
「おっお前!何泣いてんだ!」
お構い無しに泣きわめくジュンに珍しく慌てた様子を見せるナギ。
「きっちんたいまーよりお前の方が大切に決まってんだろ、泣くなバカ」
ナギの胸に不器用に顔を押し付けられ、背中を撫でて貰う。
すると大好きなナギの香りと温もりが伝わってきて落ち着いていく。
そんな私の様子を見てナギも安心して胸を撫で下ろす。
「ねぇ、ナギ」
「ん?どした?」
「さっきの言葉本当?」
「さっきの?」
「うん。きっちんたいまーより…その、、私が大切っていう…」
ナギは自分の胸の中でもじもじと言う恋人に可愛さと愛しさを感じた。
「ナギは、きっちんたいまーより私が好き?」
やっと顔を上げたジュンは涙で潤んだ瞳でナギを見つめる。
「っ…こんの天然デストロイヤーめ」
ナギはジュンの唇に自分の唇を押し当てた。
何度も重ね合う唇。
甘い甘い口付けはお互いの蟠りを溶かしてく。
ふとナギがゆっくり唇を離すとニヤリと笑った。
「その答えは今からお前の体に刻んでやるよ。ベットの上でな」
目を見開くジュンの体温が一層熱くなった。