緋色の海に浮かぶ蝶
□episode2
1ページ/7ページ
「ここは……」
目を覚ましたのは向日岳人。
朦朧とする意識の中、必死になって目を凝らした。
向日はいつの間にか真っ暗になっていたことに、そしてここが氷帝の体育館だと言うことに、気がついた。
記憶が蘇ってきた向日は、はっとする。
「そうだ、皆誰かに殴られて……侑士!!」
暗闇の中、忍足を探す向日。
その時、低い、独特の訛りがある声が聞こえた。
「がく………と……?」
その声は、忍足のものだった。
声のする方へ、床に這い蹲うような形で向かう。
段々と暗闇にも目が慣れてきて、その目にハッキリと忍足の姿を確認することができた。
「侑士っ!!」
「岳人!大丈夫やったか!?」
「あぁ、でもちょっと頭がガンガンするぜ!……って侑士?」
忍足は向日の首元を見つめていた。
それに気づいた向日は、自分の首に違和感を感じた。彼は必死になっていたため、今の今まで気がつかなかったのだ。
「何だ、これ……?侑士は?」
「俺にも、ついてる。」
そう言って、忍足はジャージのファスナーを胸辺りまで下げた。
暗闇でよく見えないが、確かに首輪のようなものが向日の目に映った。
忍足はその首輪を外そうとするが、外れそうな気配はない。
触った感覚で、金属のようなものでできていると解った。
「それにしても、何やおかしないか?月明かりもなんも無いし。何かで覆われとるみたいや。今、朝なのか、夜なのかも解らへん。」
「俺、時計持ってるぜ!……10時半だ。……さっきまで俺達、部室に居たよな?」
「…てことは、そんなに時間は経ってへんっちゅーことか。」
.