緋色の海に浮かぶ蝶

□episode2
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「ここは……」





目を覚ましたのは向日岳人。

朦朧とする意識の中、必死になって目を凝らした。



向日はいつの間にか真っ暗になっていたことに、そしてここが氷帝の体育館だと言うことに、気がついた。




記憶が蘇ってきた向日は、はっとする。





「そうだ、皆誰かに殴られて……侑士!!」




暗闇の中、忍足を探す向日。
その時、低い、独特の訛りがある声が聞こえた。





「がく………と……?」





その声は、忍足のものだった。
声のする方へ、床に這い蹲うような形で向かう。


段々と暗闇にも目が慣れてきて、その目にハッキリと忍足の姿を確認することができた。


「侑士っ!!」

「岳人!大丈夫やったか!?」

「あぁ、でもちょっと頭がガンガンするぜ!……って侑士?」




忍足は向日の首元を見つめていた。
それに気づいた向日は、自分の首に違和感を感じた。彼は必死になっていたため、今の今まで気がつかなかったのだ。



「何だ、これ……?侑士は?」
「俺にも、ついてる。」



そう言って、忍足はジャージのファスナーを胸辺りまで下げた。

暗闇でよく見えないが、確かに首輪のようなものが向日の目に映った。

忍足はその首輪を外そうとするが、外れそうな気配はない。

触った感覚で、金属のようなものでできていると解った。

「それにしても、何やおかしないか?月明かりもなんも無いし。何かで覆われとるみたいや。今、朝なのか、夜なのかも解らへん。」

「俺、時計持ってるぜ!……10時半だ。……さっきまで俺達、部室に居たよな?」

「…てことは、そんなに時間は経ってへんっちゅーことか。」





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