Kiss me please

□不二山嵐
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「なんか……親よりも一緒にいる気がする。おまえと」

流しで顔を洗いながら、傍らに立つ翔子にぽつりと言う。

「部活の間中、そんなこと考えてたの?あ、だからずっと上の空だったんだ」
翔子の鋭い一言に、俺は思わず苦笑する。

「上の空だったか?俺」
「だったよ」

顔だけでなく髪にも水を流してさっぱりした俺の頭に、手にしていたタオルをぐりぐりと押し付けてくる。

(さすが、タイミングよくわかってんな)
乱暴な仕草だが、その気遣いに顔がほころぶ。

「良く見てるんだな、俺のこと」
頭の横に添えられている手をぎゅっと掴んで、見上げる。

細くて柔らかい手首――壊してしまいそうだ。

「不二山くんが、よく観察しろって言ったんだよ」

唇を尖らせながら、気まずそうに顔をそらす。

照らす夕日のせいか、翔子の顔が赤くなっている気がする。

どうして、こんなに胸が騒がしいんだろう。

陽だまりの中にいるような、でも、風が吹き抜けていくような。


「なあ、おまえ、俺が考えてること、分かるか?」
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