Kiss me please
□不二山嵐
3ページ/4ページ
「なんか……親よりも一緒にいる気がする。おまえと」
流しで顔を洗いながら、傍らに立つ翔子にぽつりと言う。
「部活の間中、そんなこと考えてたの?あ、だからずっと上の空だったんだ」
翔子の鋭い一言に、俺は思わず苦笑する。
「上の空だったか?俺」
「だったよ」
顔だけでなく髪にも水を流してさっぱりした俺の頭に、手にしていたタオルをぐりぐりと押し付けてくる。
(さすが、タイミングよくわかってんな)
乱暴な仕草だが、その気遣いに顔がほころぶ。
「良く見てるんだな、俺のこと」
頭の横に添えられている手をぎゅっと掴んで、見上げる。
細くて柔らかい手首――壊してしまいそうだ。
「不二山くんが、よく観察しろって言ったんだよ」
唇を尖らせながら、気まずそうに顔をそらす。
照らす夕日のせいか、翔子の顔が赤くなっている気がする。
どうして、こんなに胸が騒がしいんだろう。
陽だまりの中にいるような、でも、風が吹き抜けていくような。
「なあ、おまえ、俺が考えてること、分かるか?」