Kiss me please

□不二山嵐
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自分でも分からない答えを、翔子なら知っているんじゃないかと問いかける。

「え……わ、分かんない……」

しかし、翔子は一度俺の顔を確認してすぐに視線を外し、消えそうな声で答えた。

(ああ――)

思い至るよりも先に、行動によって答えは示された。

「――?!」
突然の接近に驚いた、その吐息ごと捕える。

(唇、震えてる)
その、か弱さと柔らかさに胸が甘くうずく。

(俺、キスがしたかったんか。翔子に、触れたかったんだな)

行動に移してしまえば、もやもやとした胸の中の霧も晴れていくようだった。

「んーーーー!!」

苦しそうに胸を叩かれ、長い間翔子の呼吸を奪っていたことに気付いた。

「わ、わりぃ」
慌てて体を離すが、改めて考えるととんでもない事をしてしまった。

「俺、お前の気持ちも考えねえで……すまねえ」

申し訳なさで翔子の顔が見られない。
そもそも謝って済む問題ではない。

むしろ謝ることによって相手に「許す」という選択肢しか残さないようにする、卑怯な技かもしれない。
それでも、俺は自分の気持ちをまっすぐに相手にぶつけたいと思う。

「俺――」

意を決して、正面に立つ大切な存在に気持ちを告げようとしたが、俺の言葉は甘い唇によって遮られてしまった。

「責任とって、来週も再来週も――ずっとずっとプールに付き合ってね」

唇を離した翔子は、恥ずかしそうに笑った。

■終■
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