オリジナル
□笑わないピエロ
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笑わないピエロ
白塗りの顔に大きな星を彩り、水色の涙を描いたピエロ。
ぼくは笑わないピエロ。
道化となって笑いを振りまき笑わないピエロ。
口元には大きな紅を引き、とんがり帽子をかぶった陽気なピエロ。
笑わないピエロには訳がある。
笑わないピエロは笑えないピエロ。
ぼくの話を聞いてくれるかい?
ぼくは3歳のときから団長をしている父親に連れられて、日本中を公演して回ってたんだ。
そのころから道化の技を叩き込まれつつね。
ある日、中国からトラの赤ちゃんがやってきてぼくらの仲間に加わった。
名前はガジ。
いっつもなにかをかじってるからつけられた名前なんだけど、そのまんまだね。
ガジはトラのくせにやさしい奴でさ。
ぼくと遊ぶときは絶対に爪を立てないの。
ぼくらは食事のときも寝るときも稽古のときも、いつも一緒だった。
デビューはガジのほうが先だったね。
トラの中にも天才っているのかな?
ガジはなにを教えてもすぐにこなせるようになるから、すぐにサーカスの看板スターになったんだ。
人気はまさにうなぎのぼり。
ガジのおかげでサーカスは大盛況。
そのうちぼくも出演するようになったんだけど、いつもガジのサポート役。
正直、腐ったこともあったよ。
でもガジは親友だから、そんな気持ちすぐに吹っ飛んだけどね。
事件が起こったのは3年前。
その日もいつものように満員のお客さんの前で演目をこなしていったんだけど、どうも客席におかしな人がいるなっていうのはみんな感じていたんだ。
みんなちょっと神経質になってたかな。
もちろんガジも少し様子が違った。
めったにないんだけど、低いうなり声をあげたりしてね。
ハプニングはぼくの出番のとき。