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□超短編
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[俄雨]
君が目覚めた時、一番最初にかける言葉を探してる。
“おはよう”では伝わらない、君が眠っていた間の苦しみ。
責めるだけでは伝わらない、君が帰って来たことへの喜び。
目覚めを受け入れるだけではもの足りなくて、言葉ばかりも退屈だ。
眠っていてものびる髪を指に絡めて、前髪を指ですいて遊んでいて、
俄雨がくすぐったそうに顔をしかめる瞬間を見た。
心の準備は出来ていなかったのに、自然と言葉は生まれた。
“馬鹿だね”
とても私の心境に適していて、皮肉と愛情たっぷりに、全部を褒めてあげられる言葉、
なのに、
あたし、喉が詰まって、何も言えなかったよ。
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