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□ネ申とは時に森羅万象をも越える
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[とは]
これから、悲劇の対象となるであろうその人、宵風は、手土産だと雷光から渡されたたい焼きとワッフルを頬張っていた。
ソファにいる二人は、先ほどからチラチラとこっちに視線を送ってくる。
恐らく自分のことを話しているんだと思ったが、特にこちらから話しかける必要はないし、第一この弱った聴覚では部分部分しか情報が入ってこない。
結局、我関せず、といた風貌で、今は目の前にあるワッフルに集中した。
ガチャリ
ドアの開く音が室内に響く。
あぁ、遂に来てしまった…という表情をしてから、俄雨は雷光の元へ向かう。
「色々選んでいる内に遅くなってしまったね」
にっこりと、悪意のない笑みを浮かべる雷光。
これほど、この人の笑顔が怖いと思ったのは、俄雨は初めてだった。
「宵風君は黒が好きみたいだから、奥の方まで探してみたのだけれど、何分私は黒を着ないものでね」
すまなさそうに宵風を見てから、さあ、好きなのをどうぞと言わんばかりに、鞄から取り出した衣類を床に並べ始めた。