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□ネ申とは時に森羅万象をも越える
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[ネ申]
(…どうするんですか)
(……ま、どーにかな)
(なるわけありませんよ!!!)
こそこそと話す雪見と俄雨。
二人をよそ目に宵風は部屋の角でいつもの座り方――体育座りで窓の外を眺めていた。
・・・・
・・・
・・
・
数分前…
突然、アポもなしに雷光と俄雨が雪見宅に上がり込んできた。
まるで警察の現場検証のように部屋を見てから、雷光は宵風に以前から抱いていた疑問を投げかけた。
「宵風君は、着るものには困っていないのかい?」
「…別に。僕には必要ないから」
「先輩…表の仕事も上手くいっていないんですか?」
「"も"ってなんだ、"も"って!
しかもその哀れみを帯びた目で俺を見るんじゃねぇ!!!」
「…僕はもうすぐ消え」
「頼りのない保護者をもって、大変だろうに」
「雷光、お前いい加減に…」
「そうだ。なら、私の古着をあげようか」
「……必要ない。僕はもうすぐ」
「良し。そうと決まれば善は急げだ。俄雨、部屋の鍵を寄越しておくれ」
そうして、宵風の言葉にも雪見の怒りにもまったく耳を傾けず、雷光は部屋を出ていった。
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・・
・・・
・・・・
「はぁ……」
俄雨は、雷光の勢いに押され鍵を渡してしまった罪悪感に深いため息を吐いた。
「どうした?雷光LOVEなお前が雷光の言うことに反対するなんて」
雪見に言われ、再度ため息を吐く。
そう、先ほど鍵を寄越せと言われた俄雨は、これから起こるであろう出来事を予測して、暫く鍵を渡すのを渋っていたのだ。
「……まさか雷光の私服を宵風に取られるのが嫌とか言うなよ」
「ある意味当たりです」
がっくりと肩を落とし俯きながら俄雨は答えた。
「…ある意味?」
まさか、コイツが雷光に抱く“好き”は本当に――…そこまで考えて、雪見は冷や汗が背中を伝うのを感じた。
「…前にも言ったじゃないですか」
「あぁ?」
「雷光さんの私服センスは……」
『神がかっている』
そういえば以前に和葉の店で言われたな、と雪見はふと思い出した。
でも―…
「神っつってもアイツも良い年だし常識をわき」
「雷光さんに世間一般の「常識」が通じると思っているんですか?」
ふぅ…っとさらに深いため息をワザとらしく吐いてみる。
「アレを見たことがないから、そんなこと言えるんです」
「……そんなに、酷いのかよ」
「酷いんじゃなくて、神なんですよ」