ss-under story-@

□お気に入り*前編*
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予想していなかった。


夢にも思わなかった。


嘘だと思いたかった。


信じられなかった。


怒鳴り散らしたい。


思いきり叫びたい。


触るなと叫びたい。


夢の様な話。でも本当の話。





お気に入り/前編
定春君のお気に入り






「ただいまぁー…」

買い物から帰ってきた銀時。
いつもなら玄関を開けてすぐに、飛んで来てくれる彼女。でも、今日は飛んで来てくれる所か、姿さえ見えない。
出掛けたのだろうと考えたが、靴がある。銀時を買い物に行かせたのだから、自分が出掛ける事はないだろう。
不思議に思いながらも、銀時は廊下を進んでいく。

(どうしたんだ…?桜のやつ…)

廊下を進んでいく途中でも、桜の姿が見えない。
すると、話声らしきものが銀時の耳を霞めた。はっきりとは聞こえない声。
耳を澄ませて、聞き取ろうとするが、上手く聞こえない。

(誰か来てんのか…?)

そう思うが、玄関を思い返して違うと判断した。
声は居間では無くて、寝室から聞こえてくる。その事に気付いて、寝室に意識を集中させる。
そして居間に近付くに連れて、その声がはっきりと聞こえきた。
はっきりと、銀時の耳に届いた。やっぱり寝室から聞こえてきた。

「やめっ…ちょっ…やだっ…はなしてよぉー」

(んなぁぁぁ!!)

聞こえてきたのは桜の甘い声。
衝撃を受けた銀時。
いつも聞いている桜の甘い声に間違いない。確実に桜の声。

(な…なんで昼間っからピンクな声!?え?銀さん此処にいるじゃん!!相手は!?)

動揺しまくりの銀時。
体を重ねる相手は襖の向こう。でも客としては誰も来ていない。
一体、桜の相手は誰…?

(もしかして…浮気か!?銀さんを買い物に行かせたのは逢い引きの為!?いやいやいやいや…桜に限ってそんな事ないないないない有り得ない!!)

「やっ…やだ…退いてよぉー…」

(桜みてぇな可愛い子目の前にして退く訳ねぇーじゃん!!ま…まさか桜…我慢出来なくなって一人で…)

色々な思考が頭を巡る。
桜がこんな声を出している理由が、襖の向こうにある。でも開けていいのか戸惑う。
桜が一人でしているのなら、気を使うべきなのか…。それとも鬼畜っぷりを発揮すべきなのか…。
どうしていいのか解らない銀時。

「くすぐった…やっ…」

桜の甘い声に、段々興奮してきてしまった。
襖の向こうの光景を勝手に思い描き、益々興奮する。
肌蹴た着物に、自分を思い描きながら、自分の名前を呼ぶ桜。
興奮せずにはいられない。
襖に耳をくっ付けて聞いていたら、自分の息なのか、気の所為なのか荒くなった鼻息が聞こえてきた。

「あれ?俺の鼻息?相当興奮しちまったよ…」

再び思い描く。しかし、銀時はそこではっ‥とした。
聞こえてくる鼻息は自分のじゃない。こんな荒い鼻息ではない。こんなに息が荒かったら、ただの変態だ。
しかも、聞いた事のある鼻息。よく考えた。鼻息の正体を…。
次の瞬間、銀時は気付いて、再びはっ‥とした。桜が溢した言葉が、決定的な証拠だ。

「やっ…さだ…はる…そんなに舐めないでよ…きゃうっ」

「定春ぅぅぅぅぅ!!」

叫んだと同時に、銀時は襖を力任せにスパーンッ!と開けた。
やっと理解できた。桜が一人で甘い声を出している理由も、聞こえてくる荒い鼻息の正体も。全て理解できた。
襖の向こうに広がっていた光景に、銀時は怒りを覚えた。
桜に跨っている定春。肌蹴た桜の着物。泣きそうになっている桜。桜を一生懸命舐めている定春。しかも定春の舌は胸にまで到達していた。

「銀ちゃん…助けてぇー…」

「定春お前……ッ!!」

銀時に気付くとすぐに、桜は泣きながら助けを求めた。
女の子一人の力で、定春を退かすなんて無理だ。可愛いくせに、無駄にデカイ。
桜を襲っている定春を見て、銀時は何かが切れた。

「助けてぇぇー…」

「俺の桜に何してんだぁぁぁぁぁぁぁ!!」

洞爺湖に手を掛け、定春に振り上げようとした。
桜に厭らしい事をしていいのは自分だけ。いくら定春でも、桜を襲うなんて許せる訳がない。
定春を退かそうと、切り掛ろうとするがいつものパターン。

「あっ…」

「あれ…?」

桜から退いたはいいが、絶好の玩具が帰ってきて嬉しいのか、定春は銀時に頭からかぶりついた。
視界は真っ暗。
無事に桜は助けられたけど、次の被害者は銀時になってしまった。
かぶりつかれた銀時を見て、唖然とする桜。助かった…と安心したが、かぶりつかれているのは自分の恋人。でもいつもの事だと割り切る。
あっさり定春が銀時の方に行ってしまい、寂しい気持ちになる。
定春のお気に入りの玩具は、銀時みたいだ…。



 

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