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□お気に入り*後編*
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お気に入り/後編
銀時君のお気に入り
「んで?どうして定春なんかに襲われたんだ?」
やっと定春から解放された銀時。
改めて桜の無事を確認して、一安心した。桜を抱き締めて落ち着かせた。
襲われた…と言うより、ただ単に定春がじゃれていただけ。
桜の前に座り、銀時は問い掛けた。まだ動揺している桜。
「いや…ただ餌あげようと思って定春の所に行っただけだよ」
「餌って……桜?」
「んな訳ないでしょ!!ドックフード!!」
そう言いながら、桜は定春が寝ているすぐ近くにある餌入れを指差した。
綺麗に食べてしまって、残っているのは丸い器だけ。定春の餌入れだから、直径三十センチ以上はある。大きい器が、ちょこんと置いてある。
定春の餌入れを見ていて、先程の光景を思い出してしまった。
「餌と間違えて俺の桜に…」
「定春が私を餌と間違える訳ないでしょー!!銀ちゃんなら兎も角…」
「あれ?俺って餌?」
「餌って言うか……玩具?」
「ひどっ…」
軽くショックを受ける銀時。玩具なのは本当の事。現に先程だって噛みつかれていたし、玩具なのは強ち嘘ではない。
事の次第はこうだ。
桜が定春に餌をあげようと定春が寝ている寝室に行った。餌を食べさせる為に起こしたら、いきなりじゃれ始めた…と言う次第である。
意外に簡単な次第だが、事実なのだから仕方ない。他に言いようもない。
「それより…銀ちゃん頭平気?」
「俺の頭は産まれた時から平気だ」
「そうじゃなくて…傷!!定春に噛まれた時の…」
そう言いながら、桜は銀時に手を伸ばした。
噛まれているのはいつもの事。だけど心配なのは心配だ。
「あ?…あぁぁ…ッ!!」
(ヤバイって!!これヤバイよ!!)
桜の霰もない姿を思い出し、声が裏返ってしまった。
思いきり動揺を見せる銀時。
視線を自分から反らした銀時を見て、桜は首を傾げた。
「どうしたの?銀ちゃん…」
「いや……あの…」
膝をずって銀時の元に近寄り、桜は銀時を見上げた。何気無い行動だが、厭らしい想像をした後。
見上げているのだから、当然上目使い。不安そうに見上げてくる桜の表情が哀願してきている様に見えてしまう。
先程の桜の想像を思い返してしまい、銀時は桜をまともに見られない。
少し肌蹴た着物。誘っている様にしか見えない。
定春に噛まれた事で、痛みで我を取り戻していたが、興奮が再び振り返して来てしまった。定春は寝ている。だからまた…と言う訳にも行かない。
桜の甘い声を聞きたい。
定春じゃなくて、自分が泣かせたい。その思いは、募る一方。
「銀ちゃん…?どうしたの?噛まれた所が悪かった?それとも私何かした…?」
チラリと見ると、桜の悲しそうな表情。基、銀時には哀願している様にしか見えない表情。
パッ…と浮かぶ、桜が自分の名を呼びながらしている想像。
誰か来たらどうしよう…なんて思考、すでに吹き飛んでいた。
あんな想像してしまった後で、こんな無防備な彼女を見てしまったら、我慢なんて馬鹿らしくなるだろう…。
銀時の中で、何かが切れた。プツン…と音を立てて。
桜の肩に手を掛け、やっと視線を向けた。
「銀…ちゃん…?」
「定春に舐められてベトベトだろ?」
「ん…まぁ…」
「一緒に風呂入ろ」
「うん……うん?えっ!?いいい一緒にッ!?いや…それは…」
銀時の言葉に、此程までにない程の慌てぶりを見せた桜。
一緒にお風呂なんて入った事なんてない。その前に、一緒に入ろうと言っても、恥ずかしくて首を横に振るだろう。遠慮しようと首を振るが、銀時はそれを丸っきり無視。
「まぁいいからいいから」
そう言いながら、銀時は桜を抱き抱えた。俗に言うお姫様だっこ。
笑っているが、目が笑っていないのが怖い。
「ちょっ!銀ちゃん!!」
抱き抱えられて、暴れてみるが下ろしてなんてくれない。強引に抱き抱えられている。
「銀ちゃん下ろして!!」
「ヤダ」
「や、ヤダって…」
銀時の否定に唖然とした。
しかも、ヤダと言った銀時の声が、いつもより低かった。それが何を示しているのか解らない桜。
変な釦を、知らぬ間に押してしまったみたいだ…。
* * *
お風呂場に着くと、タイミングよくお湯が沸いた。
強引に連れて来られて、桜はまだ戸惑っていた。確かにお風呂には入りたい。定春に舐められたから、体がベトベトしていて気持ち悪い。でも、銀時とは入りたくはない。
恥ずかしくて、頭がどうにかなってしまいそうだからだ。体を重ねているとは言え、まじまじと体を見ている訳じゃない。その点お風呂は、相手の体をじっくり見る事になる。
裸の付き合いなんて、恥ずかしいの他にない。
桜は入りたくなくて、銀時を見上げた。
「ね…ねぇ銀ちゃん…」
「ん?どうした桜?そのまんま入るのか?それはさすがに頂けねぇなぁー」
「本当に…一緒に入るの…?」
「何今更言ってんだ。入るに決まってるだろ。ささっ、早く脱いで脱いで」
「なっ!!」