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□恋愛協奏曲
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煙草の煙。


眼鏡。


汚い白衣。


甘い物好き。


それが、あなたの目印。





純愛協奏曲





三年Z組の担任である銀八先生とは、秘密の恋仲。
誰にも言えないのが凄く悔しいけど、まぁ仕方ない…と割り切る事にしている。

友達にも言えない。
誰にも言えない秘密の関係。
禁断の関係に、興奮を隠せない。

好きになったのが、たまたま教師だっただけ。ただそれだけ。
まぁ、この学校の校長馬鹿だから知られたりしないだろう。

なので今は、禁断の恋に華を咲かせている最中なのです。

「銀八もう来てるかな…?」

心弾ませながら、廊下を歩いていく。
放課後の校舎に残っているのは本の一握りの生徒だけ。教師は何故か職員室に引きこもり。
生徒の数が少ない放課後は密会の時間。何時も、保健室で待ち合わせをする。

銀八先生を初めて見た時、保健室の先生かと思った。
だけど、全くかすってもいなくて、担任だった時は驚いた。
しかも担当教科現国。白衣関係ないじゃん…と思ったけど、今じゃ白衣姿が当たり前。

改めて思えば、初めて銀八を見た時から気になっていたんだ。
担当だと解った時、喜んでいる自分がいた。
その頃から、恋は始まっていた。

保健室に着き、扉を開けて中の様子を伺う。

「あれ…まだ来てない…」

まだ銀八は来ていない様子。
保健室の何処にもいない。
保健室は閑散としていて、本来居るべき先生の姿も見当たらない。
しかし、私の横にあるベッドにはカーテンが掛けられていて、誰かが眠っているのを物語っていた。
密会するのに、人が居たなら関係を知られてしまう。
放課後に人が居る事自体珍しい。この学校の人達はやたら元気だから、保健室で休むと言う事に縁がない。
使うとしたらサボる時くらい。
しかし今は放課後。サボる事なんてない。
私は、誰が寝ているのだろうと気になってしまい、せめて顔だけども見ようと、カーテンに手を掛けた。
だけど、見る事は出来なかった。
カーテンを掴んだ瞬間、手が出てきて腕を捕まれたのだ。

「えっ…わっ!」

腕を捕まれたと思ったら、思いきり引っ張られた。
ベッドの上に倒れこみ、何が起こったのか、事態が処理できない。
一瞬の事に頭がついていけない。
然し、よくよく考えると、私はベッドの上に倒れたのではなく、ベッドで寝ていた人の上に倒れたのだ。いや、正確には倒された、の方がいいかも知れない。
困惑と戸惑いで、思う様に働かない思考で考えていたら、何時もと変わらない声が降ってきた。

「桜捕まえたぁー」

気の抜けた声。こんな声、彼奴しかいない。
優しく語り掛けてくる、低い声。
それは、私が何時も聞いて、安心している声。

「銀八!?ったく…びっくりしたじゃん!」

「驚かそうと思ったしぃ?見事に引っ掛かった」

私を捕まえたのは紛れもない銀八先生。
銀八の上に重なり、驚いたせいで心臓が少しだけ高鳴った。
私を抱き締めながら、且つ楽しそうに口を開いた銀八。
でも、ベッドを使っているのが銀八で良かった。他の誰かじゃなくて、凄く安心した。

「普通に待ってればいいのに…」

小さい声で呟いた。
普通に待っていて、私を抱き締めてくれるのかと思った。しかし、違った。違う形で、今は抱き締められているけれど…。
何時もと違うけど、誰にも邪魔されずに密会出来る事に安心した。
銀八は抱き締めていた腕を離し、上半身だけを起こした。
私はベッドに座り、銀八に体を向けている体勢。
私の髪の毛に手を伸ばし、掴んだりと撫でたりともてあそぶ。

「たまには違う迎えの仕方でもいいじゃねぇか。それに…」

「それに…?」

「ベッドでイチャつくんだから、初めからベッドで迎えた方が早いじゃん」

「なんだそれは…」

少しあきれながら、私は言った。
短絡思考。単純明快。

「手間が省けていいだろう?」

「そ、そりゃぁ…そうだけど…」

ベッドでいちゃつくのだったら、移動の手間が省けていいけれど、あんな事されたら驚くわ。せめて、ベッドから手招きするくらいは欲しかったよ。

だけど、銀八に与えられたものなら何だって嬉しい。
例え、それが驚きでも構わない。
銀八が与えてくれたものなら、全て愛しい。

其ほど、銀八に夢中と言う事。
与えられたものは、全て、愛に変わっていく。

髪の毛をもてあそんでいた腕が、私の背中に移動した。
そして、強く引き寄せられた。

「えっ…」

気付いたら、銀八の腕の中。
強く抱き締められていた。
安心する甘い香り。
煙草の香りも、安心する。

「それに…早く、桜を可愛がれるだろ?」

「た…確かに…」

手間を省けば、早く銀八に抱いてもらえる。
銀八は、それが我慢出来なかったみたい。
焦らなくても、私は決して逃げないのに…。
銀八から逃げるなんて、絶対に有り得ない。

「早く…、桜と繋がりたいからさぁ」

「ったく…仕方ないなぁ」
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