ss-under story-@

□Love letter
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書き綴る想い。





Love letter




「名前呼んでくから、順番に取りに来いよー」

「はーい」

一同がやる気のない返事をした後、これまたやる気のない担任教師が、一週間前にやったテストを返し始める。

採点って、一週間も掛かるのだろうか…。


いや、基本やる気のない教師だ。一週間でも早い方か。下手したら、面倒くさいとか言って、一ヶ月掛かる可能性だってなくはない。
皆、やったテストの内容なんて、絶対忘れてる。下手したら、テストをした事すら忘れてるに違いない。

あ、教師も生徒も、このクラスじゃあまり変わらないか。

やる気のない声で、やる気なくテストを返していく担任教師。見てると、力が抜けてくる。
様々なリアクションが見れて、意外に、この時間が好きだったりする。点数が低ければ明らかに落ち込み。点数が高ければ、小さなガッツポーズをして見たり。思い通りの結果にならなくて驚いたり。白紙で出して、がっつり怒られていたり。落書きをして、その落書きを評価されていたり。

こっそり、テストで手紙のようなやり取りをしてみたり…。


「桜ー」

「はーい」

名前を呼ばれて、テストを取りに行く。受け取るけれど、チラリと見えた点数になんか興味ない。

「もう少し頑張れよー」

「はーい」

テストを半分に折り、自分の席に戻り、テストを広げる。そして、点数より大事な、お目当てのものを心の中で読み上げる。

(今日、来るよな。夕飯後に甘いもの食べたい。飯は何でもいい。任せる…って、行く事前提なのね…)

何でもいいなんて言うのが、一番困る。けれど、そんな時のパターンは決まってる。買い物に行って、その時に自分が食べたいものを作る。それがお決まり。文句は言わない。ってか、言わせない。まぁ、銀八は文句なんて言わないけれど。

お互い独り暮らし。だから、夕御飯を作りに行くのは、ほぼ日課になっている。だからきっと、来る事前提なのは、毎日行っているのだから当たり前。

テストを手紙代わりに、伝えたい事を伝えてくる。テストだけじゃない。提出するプリントにも、手紙を綴る。
人前じゃ、こんな会話は出来ないから。やる気がないとは言え、銀八は立派な教師。生徒と付き合ってるのがバレたら、教師を続けられなくなる。だから、こっそりと、いつも手紙のやり取りを交わす。テストが赤点だとしても、そんな事より、銀八からの手紙の方が優先。
テスト返しが好きな理由は、皆のリアクションを楽しむ事だけじゃない。銀八からの手紙を、早く読みたいからが最大の理由。
意外に銀八は字が綺麗。黒板に書く字はふざけてるから汚いけれど、手紙に書き綴られている文字は、真剣だから綺麗。最初見た時、意外すぎてドキドキしたくらい。女の子は、ギャップに弱い生き物。あ、それは男性も一緒か。
人前で恋人の会話が出来なくても、手紙のやり取りだけで十分。銀八の綺麗な字が見れる。しかもそれが、自分だけに向けられた手紙なら、余計に嬉しい。

(早く学校終わらないかなぁー)

今は三時間目の真っ最中。
テストを配り終えた銀八は、かったるそうに授業を始めている。
銀魂最新刊についての解説や、テストに出るシーン等の説明。あと、自分がどれだけ格好いいかを力説している。そして、何でモテないかの方向に、話が進み始めている。

「先生ー、何で銀さんはジャンプの主人公なのに、モテないんですかー?」

「主人公だからって、モテるのが当たり前とかねぇ、考え方がふりぃーんだよ。んなのはねぇ、ト○ブルだけでいいんです」

びしっと指を指して言う事なのかは解らないけれど、確かに、モテまくりなのはつまらない。
あの子もこの子も主人公が好きとかになったら、ドロドロした漫画になりそうで嫌だ。

っていうか、銀八がモテまくりとか絶対に嫌。だから、モテなくていい。そのままでいい。死んだ魚のような目のままでいい。

「モテない奴の言い訳でさぁ」

「モテなくても、大事な子が一人いりゃ十分なの」

「キャッキャウフフしたいでさぁ」

「勝手にやってろ。先生興味ないから」

(大事な子…)

妙に説得力があると思うのは、桜が銀八の彼女だから。
他の生徒は深く考えていないみたいで、銀八の台詞を軽く聞き流している。まぁ、気障な事をたまに言うから、今回もまたそれだろうと思っているに違いない。
絡んでくる沖田がうざくなったのか、銀八は払う仕草をした。

自分に向けられた言葉だと、信じていいのだろうか…。


そうだとしたら、めちゃくちゃ嬉しい。今日はご馳走にしようかな?あ、でも銀八給料前だから金無いって言ってたな…。

うん。
いつも通りでいいや。
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