ss-under story-@

□Like a beautiful full moon.
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今宵は君と。



この満月だけが、愛する二人を目撃する…。




Like a beautiful full moon.





山中にある合宿所。
銀魂高校の剣道部は、毎年合宿の為にそこを訪れる。今年も例外ではなく、近藤さん率いる剣道は、合宿へとやって来た。
汗水流して練習に励む。ただでさえ暑いけれど、剣道は防具を使う競技。汗が尋常じゃない。合宿所にある道場は、かなり汗臭い。
竹刀がぶつかり合う高い音を聞きながら、マネージャーである桜は、淡々と仕事をこなす。しかし、そんな桜から離れないサボり魔が一人。

練習メニューの確認をしている桜の隣で、汗一つ掻いていない総悟。先程から、練習に参加しようとしていない。そんな総悟に、桜は呆れながら話し掛ける。

「総悟…練習は?」

「土方と近藤さんが来たらな」

今ここに、部長である近藤と、副部長である土方はいない。顧問に話があるとかで、練習には遅れて来るらしい。
二人がいないのをいい事に、総悟は桜にべったり。土方がいれば、真っ先に怒号が聞こえるが、今は総悟を怒れる勇者は、部員の中にはいない。だから、必然的に、総悟の彼女兼マネージャーの桜が言う嵌めになるのだ。
まぁ、土方や近藤さんに言われても、のらりくらり交わすのが上手いから、いつも最終的には、桜が言う事になるのだけど。

「総悟が竹刀振るってる姿…大好きなんだけどなぁ…」

ぼそりと呟く様に、桜は言葉を溢した。その言葉をはっきりと聞き取った総悟は、すくっと立ち上がり、壁に立て掛けていた竹刀を手にした。そして、丁度目の前で、素振りをしていた山崎を捕まえる。

「山崎ぃ、俺と手合わせしろぃ」

「え?何でですか?いきなり…」

唐突に声を掛けられ、山崎は困惑気味に身構える。
手合わせというのに、防具を一切身に付けていない総悟。桜に言われたから、竹刀を振るいたいだけで、練習を真面目にする気は一切ない。桜に、格好いい所を見せたいだけ。ただそれだけ。
偶々目の前に山崎がいた。目の前にいた奴を捕まえただけ。山崎じゃなかったとしても、きっと、捕まえていただろう。

「ほーれ」

山崎相手に、容赦なく竹刀を振り下ろす。明らかに遊んでいる総悟。いきなり竹刀を振り下ろされ、山崎は狼狽えながら間一髪で受け止めるが、打撃は一回じゃ終わらない。竹刀のぶつかり合う音が、連続で響く。
何度も何度も竹刀を振り下ろし、山崎をおちょくる。訳が解らない山崎は、必死になり総悟の打撃を受け止める。

「ちょっ!何なんですか!?桜さん!助けて下さいよ!」

涙目になりながら、山崎は桜に助けを求める。
そんな山崎に申し訳なくなってきた桜が、口を開こうとした刹那、背後から頼もしい二人の声が聞こえてきた。

「おぉー、総悟。珍しく練習してるな」

「遊んでるだけだろ…あれ…」

感心している近藤とは正反対に、土方は総悟を見て呆れている。
二人が来た事に気付いた総悟は、竹刀を振り下ろすのを止め、二人に視線を向けた。総悟の背後で、ツートップに頭を下げる部員達の姿。勿論、総悟は頭なんか下げない。近藤さんに関しては尊敬しているが、土方に対しては、そんな感情を抱いていないから。

「桜が、俺の格好いいとこ見てぇってんで。山崎であそ…手合わせしてやした」

「今遊んでたって言おうとしなかった?」

「まぁな、彼女にそんな事言われたら、気合いも入るよなぁ」

「そんな事言ってませんよ」

「えっ?そうなの?」

「や、だからさっき遊んでたって言おうとしたよなぁ!?」

何だか会話の噛み合わない四人。そんなのはいつもの事で、構わずに練習を再開する。

「よぉーし!総悟、俺と手合わせしようぜ!」

「やだ」

「何でだよ!!??」

本気なんだか冗談なんか解らない総悟の発言に、本気で落ち込んでいる近藤。
いつもの光景だから見慣れている。これが当たり前だから、もう何も言わない。それは土方も一緒で、総悟に弄ばれている近藤に対し、溜め息を吐いた。

桜の隣で、部員達を見渡す。皆、真面目に練習をしている。サボっている奴等に檄を飛ばすのは、副部長の仕事。本当は部長の仕事だけど、近藤さんは一緒にふざけだしてしまうタイプ。だから、仕方なく土方が役を担っている。

「監督と何話してたの?」

「あぁ、何か今度練習試合があるって話だ」

「そっか。何処と?」

「夜兎高校だとよ」

「えっ?あそこって部活とかやってんの?」

「さぁな」
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