-庭球-under story@

□君の可愛い笑顔、俺だけに…。
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世界一可愛くて…。


世界一素敵な笑顔を…。


独り占め出来る喜び。





君の可愛い笑顔、俺だけに…





憩いの時間とも言える休み時間中に、桜は幼馴染みであるジローと他愛も無い会話をしている最中。ジローは窓にちょこんと座り、その斜め前に桜が立っている光景が廊下にある。
楽しそうに話す桜とジロー。時折、笑い声を漏らしながら、昔の出来事やら今さっきの出来事やらを話す。
ジローとは同じクラスで、幼馴染みだから、結構仲が良い。
今まで、部活の事を話していたジローが、何かを思い出した様に、話の話題を変えてきた。

「あっ、そういえば桜まだ侑ちゃんと付き合ってるの?」

「うん!!まだラブラブだよ」

「いいなぁー…俺も彼女ほСー!!」

ジローは悔しそうにしながら、足元の壁を軽く叩いた。
地面で言うと地団駄を踏む、に値する行為。
悔しがっているジローに、桜はきょとんとした表情を見せた。

「あれ?前に三股掛けてた子達はどうしたの?」

桜の質問にジローはしょぼんと体を縮めてしまった。
桜とジローはよく恋の相談相手に乗ったり乗られたりする。良き相談相手。ただそれだけ。勿論、桜が相談する事は侑士の事しかない。
淋しそうに口を開く。

「三股掛けてるのバレて全員と別れた…」

可愛いとモテるジローは、彼女を一気に無くし、今はフリー状態。
三股がバレてしまい、それから音沙汰無しだと言う。別れたのだから無理もない。

「馬鹿だなぁージローは。私はそんな事無いから。侑士一筋だもん!」

桜が好きなのは、侑士一人。侑士以外考えられないと言う程。
傍から見れば、会話が弾み楽しそうにしている二人、と言う光景。その様子を偶然見てしまった、彼氏の侑士。
桜を見つけた時は、嬉しそうな表情を浮かべたのだが、ジローが一緒に居る事に対して表情は一変。

(桜とジローやん…幼馴染みやから仲がええのは解るんやけど、かなりムカつくわ。俺の桜に…)

今、侑士が抱いている感情は嫉妬。
本来ならば、桜と笑いながら話すのは侑士のポジションのはず…。
なのに、自分のポジションにジローがいる、と言う事が果てしなく気に入らない。
桜も桜でジローと楽しそうに話をしている。そんな桜をじっと見つめる。
まさか自分の話をしていて、桜があんな可愛い笑顔を見せているとは、その時は考える余裕がなかった。
自分の好きな女が他の男と話している姿が気に入らない。
自分以外の相手に可愛らしい笑顔を見せているのが、無償にムカついてしまう。
それは相手をどれ程好きか、解るちょっとした試し方法かも知れない。


* * *


放課後。学園での一日が終わり、桜は安堵と嬉しさを抱えながら、廊下を軽やかな足取りで歩いて行く。
余程機嫌がいいのか、神崎の鼻歌を歌いながら、三年の教室前の廊下を歩いていく。
桜とジローが話していたのはお昼休み。桜は侑士と一緒の昼食を終えてから、尋ねてきたジローとそのまま喋り込んでしまった。
その時にジローが一気に無くしたと言っていた人の一人が桜とすれ違った。

(あっ、ジロー振った人…ってか綺麗な人…)

意外にも、ジローを振ったのは綺麗なお姉さんと言った感じの女性だった。あぁ言うお姉さんは、跡部と付き合いそうだが、実際はジローに三股を掛けられていた。
桜は正直、こんな綺麗な彼女がいるのに、三股掛けなければならないのか、ジローの心理が不思議になってきてしまった。

(解んないなぁー…私は侑士にしか興味ないし…)

桜には到底理解できない事の様に思われる。
二股や三股を掛けた事が桜にはないから
桜が見ているのは、常に侑士しかいないから。だから掛ける理由すらも思い浮かばない。
桜が気付かぬ内に立ち止まりながら、考えていた次の瞬間…

「えっ!?わっ!!なっ、何!?」

止まっていた前の教室のドアが勢い良く開き、引っ張られながら桜はあっという間に教室の中へと移されてしまった。
一瞬にして場所を移動された所為か、瞬時に状況を把握する事が出来ない。

何が起こった…?

しかし、この事に対して、不思議と恐怖が湧いてこなかった。その代わりにあるのは驚き。よく考えてみれば、桜は誰かに抱き締められていた。
唖然としている桜に、上から声が降ってきた。

「桜捕まえたでぇー」

上から降ってきた声の主がはっきりと解った。

「侑士!?なっ、何!?どうしたの…?」

何故侑士に抱き締められているのか、全く理解出来ないでいる桜。
侑士の腕の中で慌て蓋めいている。しかも、桜が捕まってしまった教室は、誰もいない視聴覚室。侑士は音が漏れない視聴覚室(此処)を敢えて選んだ。
笑顔なのに、何故か黒いオーラが漂っている。爽やかに見えて、実は黒い笑み。
少し怒り気味な侑士。理由は大体解っている。

「桜…今日ジローと楽しそうやったな。ちょいムカついたわ」

「えっ…」

またしても一瞬の出来事。
侑士が言葉を発した直後に、桜は思い切り壁に押し付けられた。
いきなりの事で全く解らない。
両手を壁に押さえ付けられて、身動きが取れず、抵抗が出来ない。

「ゆぅ…し…?どうしッ!!」

桜の言葉を遮る様に、唇を深く、深く重ねた。
いつもの優しいキスでは無く、乱暴なキス。
こんな乱暴なキスなんて初めてで、侑士が怒っている理由が全く解らない。
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