-庭球-under story@
□愛しい存在
1ページ/2ページ
夜の十時。
仕事から帰って来て、疲れを癒す空間は、今や、彼氏がいるのが当たり前。
年下の彼氏の景吾と暮らし始めて、早一ヵ月。
一ヵ月前は、中々逢えなかった。しかし今は、家に帰って来れば、誰よりも愛しい人の姿が、一番先に視界に入ってくる。
どうしよう…
私は今、果てしなく、幸せなのかもしれない…
愛しい存在
「ただいまぁー」
景吾と暮らし初めてから言う様になったこの言葉。今ではすっかり、必ず言う言葉。
しかし、私がただいまと言ったのに、景吾からの返事が返ってこない。
いつもなら、玄関まで私を抱き締めに来るのに…。今日はそれさえも無かった。
「景吾ぉー?」
景吾に抱き締めてくれるのが好きな私にしてみれば、抱き締めに来てくれないと、かなり悲しい。
不思議に思った私は、先に寝ているのかと思い、寝室へと向かった。
「景吾?」
寝ていては悪いので、静かに扉を開ける。
「あっ…寝てる…」
ベッドには、明らかに私を待っていました、と言った感じの景吾が、すやすやと寝息を立てている。
制服のままで、何も掛けていない状態の景吾。
限界まで私が帰ってくるのを、待っていてくれたのだろう。
しかしまぁ…寝顔も素敵だ事。
普段が格好良いから、寝顔も格好良い。私の彼はそう言う男だ。
私は景吾の眠りを邪魔しちゃいけないと思ったが、あまりにも景吾の寝顔が格好良かったから、額に掛かっている髪の毛を退けて、軽く額にキスをした。
「おやすみ…景吾」
景吾がぐっすり寝ているのを確認し、背を向けた。
しかし、そうは行かなかった。
「えっ…?」
いきなり腕を捕まれ、どさっ…と言う音と共にベッドに押し倒されてしまった。
一瞬の事に、驚く事しか出来ずにいる私に、景吾は勝ち誇った様な笑顔を向けた。
しかもかなり嬉しそうな笑顔。
「お帰り」
「景吾…っ!!起きてたの?」
やられた…。景吾にやられた…。
最初から寝たフリをしていたのだ。
まんまと景吾の思惑どおりになってしまった。
しかも、両腕を景吾に、押さえ付けられているから、動きたいのに動けない。
そんな事、景吾が気にするはずもなく…。
私の頬から首に掛けての辺りに、何回も唇を触れていく。
「ちょっと景吾…仕事から帰ってきたばかりで疲れてるのにぃー!」
私の意見など全く無視。
景吾が他人の言う事を聞く様な人じゃないと解っているが、私の言う事は聞いてくれる。
しかし、今日は、私の意見に耳を傾ける物の、この態勢は変わらないまま。
「いいじゃねぇか。明日休みだしよ」
「だからって…景吾明日部活じゃない」
私が口を開いている時だって、キスは止めない。
嬉しいけれど、くすぐったい。
景吾のキスが心地好いから、段々意志が弱ってきてしまった。
「何で休みの日に、桜の傍から離れて、むさ苦しい男の中に行かなきゃなんねぇんだ…」
少し不貞腐れた様な口調で、景吾は言った。
景吾のこの言葉で、私は抵抗する意志を失った。
景吾になら、いつ抱かれてもいい。
一番愛する人だし、そう言う事を解っていた上で、景吾との暮らしを決めたのだ。
後悔する事、何一つ無い。
「解ったわよ…その代わり…二発も三発もやらないでよ…」
「……無理」
「えっ!?ちょっと…やっ…」
少し考えるが、きっぱりと一言。
しかも言った後に、いつのまにか外されていたブラを退かし、胸への愛撫を始めた。
つい出てしまう声。
景吾の愛撫が果てしなく気持ち良い。
片方を舌で弄び、片方を腕で弄ぶ。
しかも私の体の下に腕を回し、持ち上げられているから、余計に景吾の愛撫に力が入る。
「はぁ…あっ…けぇ…ご……あ…」
「桜…愛してる…」
耳元で囁く景吾が愛しくて…。
愛してると言った後、私の好きな笑顔を向けてくれた景吾が愛しくて…。
つい、景吾に全てを許してしまう。
「愛してるって…いつも言ってくれる…」
「当たり前だろ…本当に愛してんだから」
いつも私に言ってくれる。
愛してる、と…。
それを聞く度に、景吾への愛が深くなっていく…。
「愛してる」
私が笑顔で言うと、景吾からの口付け。
私は愛しさのあまり、景吾の首に自分の腕を巻き付けて、抱き付いた。
深くは無いが、長くて心地好いキス。
時々、舌を絡ませる程度の口付け。
唇を離し、私に柔らかい笑みを向けて、幸せを噛み締めた。