-庭球-under story@

□呆れるくらい傍にいて。そして…
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呆れるくらい傍にいて…。


ずっとずっと…。


傍にいて下さい。





呆れるくらい傍にいて。そして…





神様は意地悪だ。
こんな日に、私に命を授けて…。
毎年、ちゃんとした誕生日に祝ってもらえないなんて、悲し過ぎる…。


毎年じゃないなんて…。


淋しすぎるよ…。


「桜ー…はよ機嫌直してやぁー…今日お前の誕生日やろ…?」

「四年に一度のね!!私はオリンピックじゃないっつーの」

私の誕生日は二月二十九日。世間で言うと閏年。
だから、四年に一度しか、本当の誕生日に祝ってもらえない。
それが嫌で嫌で堪らなかった。
自分の誕生日の所為で、今日の本当の誕生日に素直に喜べない。
本当の誕生日。本当は嬉しがるのが普通。でも素直に喜べない。
毎年来ない誕生日に不満があるから…。
他に理由なんてない。
今は誕生日を祝ってくれるという侑士の家にいる。けれど不満は消えない。
毎年侑士は私の誕生日を祝ってくれる。
それはそれで凄く幸せ。でも毎年、一日早い日。
今日の貴重な日、貴重な時間を侑士と過ごせる事も凄く嬉しいし幸せ。けれど好きな人だから…。
毎年、本当の日に誕生日を祝ってほしい。
我儘なのは十分解っている。
思い通りにならない事も解っている。
けれど、侑士が好きだから…。
誕生日じゃなくてもいつも一緒にいてくれる侑士が大好きだから…。
今日は幸せな日。

「こんな事言っても仕方ないしね…」

私が我儘を言っていても何も変わらない。
誕生日が変わるわけでもない。
いつまでもグチグチ言っていても仕方のない事。
私は隣に侑士がいてくれる事に感謝する。
どんな時でも傍にいてくれる。
いつ、どんな時でも…。

「機嫌直ったか?」

「もういいや!私がグチグチ言ってても仕方ないしさ」

「ええ子やな…。ほなおいで」

笑顔で私に向かって手招きする。ベッドで寛いでいる侑士に向かって勢い良く飛び付く。
侑士の優しい笑顔。
低くて優しい声。
優しく包み込んでくれる腕。
全てが安心する。
落ち着ける。
侑士が傍にいてくれたら、他には何もいらない。


何も、欲しくない。


「侑士好き」

「何やいきなり…」

「いきなりじゃないよ。いつも思ってる事だもん」

私のこの言葉に、侑士は照れ隠しとも取れるような苦笑いを浮かべた。
その笑顔には愛しさが含まれていて、私は幸せを感じる事が出来た。
毎日、侑士を視界に映せば、思う事はただ一つ。
それ以外は考えられない。
心の底から、誰かを愛するのは、侑士が初めてで…。
お互いに同じ気持ちでいてくれる事が嬉しくて…。
こんな日くらい、あなたに甘えてもいいよね?
私は侑士の首に腕を絡めて、侑士に抱き付く。

「ホンマに…」

「侑士…」

「ホンマにかわええ事するな。桜…」

次の瞬間、態勢が変わっていた。私の真上には侑士がいる。私の背中はふわふわな布団に接している。
侑士に押し倒された。けど、こうなる事を望んだのは、紛れもない私自身。


二人の時を…。


二人で過ごす時を…。


甘い快楽へと変えてくれるのは侑士しかいない。


「なぁ…ええか?」

「聞く必要ないでしょ?」

「それもそうやな」

そう言うと、侑士は私に口付け。
甘い快楽、の始まりの合図―…


*  *  *


深くて激しいキス。でも、それでいて優しいキス。
このキスが、何よりも、私の媚薬かも知れない。
侑士に溺れる合図と共に、一番最初に侑士に溺れる為の媚薬。だから欠かせないキス。
激しい故に息もままならない。
舌を絡め取られ、呼吸すらままならない状況に、私は陥っていく。

「ん…はぁ…」

やっと離されたと思えば、また角度を変えてのキスの雨。
息苦しくて、私の瞳には生理的な涙。きっと、顔も赤く染まっているだろう。
けれど、そんな事気にならない。


今は侑士に夢中だから。
他の事なんか、気にしている暇はない。


「侑士ぃ…」

甘く、小さく彼の名前を呟く。
侑士の媚薬を味わった私は、もう何も考えられなくなっていた。
今の私は、全てのものを侑士に奪われている。
そんな感覚に落ちていく。
侑士は私の顔を見て、妖しく笑うと、ブラウスのボタンを一つずつ外していく。手慣れた手つきで、素早く。そしてブラウスを捲り、私の体を顕にする。
今の私に、羞恥心なんてもの、欠けらも存在していない。
顕になった胸の突起を口に含むと同時に、私の体は反応を示す。
何とも言えない快楽が私を支配する。
背中の寒気は快楽の証。
口に含んだまま、舌を上手く使い、転がすようにして、厭らしく舐める。

「あっ…は…」

舌を往復させ、私に快楽を与えていく。
すると、暇になった侑士の手が、太ももへと伸びてきた。
今の私の体は敏感で、触られただけでも反応を示してしまう。
太ももを擦るようにして触られ、思わず足をビクンと反応させてしまった。
その反応を見て、侑士は私に再び妖しい笑みを見せた。それが何を表しているのか、私はすぐに理解した。
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