-庭球-under story@

□嫉妬さえも微笑みに変えて。
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やっと手に入れた幸せ


やっと手に入れた最愛の君


だからかな…?


こんな醜い感情を抱くのは…


君を愛する証なのだろう…





嫉妬さえも微笑みに変えて。





時々、ふと思う事がある。
気付けば考えている位、気にしている事。
好きで仕方なかった桜と、桜の誕生日の日に結ばれた。
強く抱きしめたら壊れてしまいそうな位繊細な桜に傷を付けない様、優しく抱きしめた。
腕の中で顔を赤くしていた桜の可愛いらしい表情は今でも鮮明に思い出せる。


二度と手放したくない。


見る度にそう思う。
気持ちを打ち明けられなくてまごついていた自分が馬鹿みたいに思えてくる。
桜の反応を見れば、すぐに解る事。
だけど忍足は、時々、桜を縛りたくなる時がある。
そうすれば、桜は自分だけのものになって独占できる。
要らぬ不安に駆り立てられる事もない。
心は一番近くにあるのに、遠くにある錯覚。その錯覚さえなくなれば、安心していられる。



汚い…のだろうか…?



誰にも渡したくないと思う想いが…。



縛り付けたいと思う事が…。



心のコントロールが出来ていない。



(なんでこないな事思うんやろ…)

やっと手に入れたのに…。
次から次へと生まれる想いは汚い感情ばかり。



独占欲。



独り占めしたい。



手放したくない。



ずっと傍に…。



ずっと…。



自分だけのものに…。


(阿呆らしい…)


それは全て愛の証。
桜を強く思う気持ちから生まれた想い。
そしてそれは…、決して捨てる事が出来ない―…


(こないな事思うてる知ったら…桜どないな反応するんやろ…)

忍足はふとそんな事を考えた。
桜が自分の今の気持ちを知ったらどうするのだろう?


否定する?


怒る?


喜ぶ…?


受け止めて、くれるのだろうか…。


忍足は無意識のうちに浅い溜息をついた。
すると部室のドアが開き、可愛い少女が顔を出した。

「侑士まだぁー?」

ひょっこり顔を出したのは張本人の桜。
片付けが終わっても、中々部室から出てこない侑士を心配し覗きに来たのだ。

「あ、あぁ…スマン…」

着替え途中なのだと気付き、侑士は慌てながら返事を返した。
着替えだと言う事を忘れていた位、桜の事を考えていたらしい。
返事をするも、何と無く元気がない。いつもの侑士とは何だか違う気がした桜は首を傾げながら、部室に入り後ろ手でドアを閉めた。
そして着替えを再開した侑士に向かって言葉を掛ける。

「どうかした…?」

「…なんでや…?」

「いや…元気がない気がしたから…さっ…」

いくら態度を装っても桜には隠し通すこと出来ず…。
侑士は苦笑いを浮かべながら再び口を開いた。

「さすがやな…」

「なんか…あったの…?」

心配そうに侑士を見つめる桜は、何だか不安そうに瞳を揺らしている。
聞きたい様な聞きたくない様な…。
侑士は心配そうに見つめる桜に背中を向けた。
汚い感情を見抜かれそうで…。思わず視線を外してしまったのだ。
そんな侑士に、余計心配を募らせた。
不安そうに見つめる桜を意識しながら、侑士はゆっくりと口を開いた。

「俺…桜の事めちゃ好きなんや…」

「はっ…?」

「好き過ぎるかもしれへん…」

「何…?急に…」

侑士の言葉の意味が理解できなく、桜は思わず聞き返した。
嬉しいのに、言葉が解せなくて複雑な気持ち。
侑士は背中を向けたまま。

「好き過ぎる…そやから要らん感情抱いてまうんやな…」

「要らない感情…?な…に…それ…」

「桜を…誰にも渡したくないんや…俺以外の奴に触れてほしくない。醜い独占欲で、醜い嫉妬や」

解っているのに、抑えられない。
桜に対する気持ちと同じで、溢れ出て来て消える事を知らない。
美しい感情なら、行き着く場所は桜。だけど、この醜い感情は行き着く場所を知らない。
場所が無いから、渦を巻いて心に留まる。消える事も、追いやる事も出来ない。形を変えず、ずっと心にいる。

「こんな俺…嫌やろ?」
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