-庭球-under story@

□君を見失わない為に、僕がすべきこと
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君と結ばれたあの日に、絶対に手放さないと誓った。


だから…


君は僕だけを見ていて下さい。





君を見失わない為に、僕がすべきこと





笑いながら話す君。
俺に向ける笑顔で、俺やない奴と話す君。
それが、堪らなく嫌で…。でも、嫉妬丸出しの俺はもっと嫌で、嫌われたくないと必死に感情を押さえる。
やって君は、ただ幼なじみと話しているだけ。そやけど、こないに嫌な気持ちになるんは、相手があいつやから…。

放課後、委員会で待たせてしもうた彼女を迎えに行くと、いつもと同じ光景が広がっておった。その光景に胸のムカムカを感じ、はよぉこの場から彼女を浚いたいと、躊躇いもなく声をかける。

「桜、帰るで」

「侑士!」

話の途中にも関わらずに、桜は笑顔で振り向いてくれた。
そやけど、話を中断された相手は、少し不機嫌な表情を浮かべている。

ざまーみろや。

「鞄取ってくるね!」

なんも知らん桜は、嬉しそうな表情でそう告げると、軽い足取りで自分の教室に行ってしもうた。
急がんでもええのに。かわええやっちゃなぁ。

彼女は、なんも知らんでええんや。
ただ、俺だけを見てくれればええ。
そうすれば、俺も決して君を、見失わないから。

桜が行ってしまった後、少し低い声で奴に話し掛けた。

「ジロー。ええ加減にしぃや」

「何のことぉー?」

無邪気な笑顔ですっとぼける。
この笑顔が可愛いなんて桜が言うから、この笑顔が憎らしくて仕方ない。
そして、ジローが俺に向けている笑顔は、他の奴に向けているそれとは違う。
少なくとも、俺を快く思ってはいないはずや。
けれど、それは仕方のないことで、どうしようもないことは解っている。
だから、どうにかしようなんて考えてへん。
だけど、桜が他の奴に笑いかけるのが気に入らない。

心の狭いやっちゃなぁ…。

なぁーんて思うけど、桜が好きやから、嫉妬すんのは当たり前や。
そやけど、嫉妬しとる自分を、桜には見せたくはない。
醜い自分だけは、絶対にみせとぉない。
そやから、桜が居らへん時にしか、こないなこと、こいつには言えへん。

「桜に近付くんやめてぇな」

「話してただけだCー?それとも、俺が桜に手ぇ出すとでも思ったの?」

「思わへんかったらこないなこと言うわけないやろ…」

ジローが、桜に手を出さないとは限らない。
手を出さない確固たるものなんて見当たらない。
桜に何かするやないかって、気になって気になって委員会に身が入らんかった。
そやから、早く切り上げてもろうてきたんや。

ジローと桜は幼なじみで、俺がジローから桜を奪った。
そうは見えなくても、こいつはそう思っているに違いない。
そやけど、桜はそないなこと思ってなくて、俺と付き合い始めてからも、ジローとは幼なじみのまま接しとる。
ジローの気持ちに、桜は気付いていない。
だから、今まで通りに接している。

こいつはただ、俺達の邪魔をしたいだけなんや。
桜に気付いてくれへんなんて望んでない。
桜に別れてくれなんて望んでない。
桜を奪う気なんてない。
ただ、邪魔をしたいだけ。
桜を取られた憂さ晴らしをしたいだけ。

だって、幼なじみだから、よく桜の気持ちを解っている。
どう足掻いたって、自分には振り向いてくれないこと。
今、桜が一番大事なやつが誰かっちゅーこと。

よく解ってんのは、他の誰でもないジロー自身や。

そやけど、ジローやって男や。
好きな子が目の前に居って、この先ずっと何もしないなんて出来るわけがない。
いつ、何が起こるのか解らん。
そやから、あんま二人きりになって欲しくない。
そやから、かわええ笑顔で笑いかけて欲しくない。

いくら二人が幼なじみやからっていうても、今は桜は俺だけのもんや…。

「何もしないよ。俺は桜の幼なじみだCー?普通に話せなくなるなんて嫌だもん」

「そやけど…」

ジローの気持ちは知っている。だから、信じてやりたい。
仲間でギクシャクするんも嫌やしな。
桜への気持ち。
本当の心の奥の気持ち。
ちゃんと、知っとるから…。
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