Tales of Rebell
□〜歯車〜 閑話休題
1ページ/2ページ
■□■□■
「こっ…こ……ここが俺の部屋ぁ!?」
「お前の、ではない。『僕とお前の』だ」
頭を抱えて絶叫するスタンを後目にリオンはアッサリ言い放つと、慣れた様子で『超』が付くほど広い室内へと足を踏み入れた
―…ソーディアン・マスターになる資質がある
そうリオンとハロルドに告げられ、パニックに陥ったスタン
だが、そのまま当人のスタンが半ば放っておかれる形で話しだけが進み…
「こんなの…一部屋で、俺の家と同じくらい広いよ!」
「…どれだけ狭い家だったんだ?」
スタンが正気に戻った時には、全て話しがまとまった後で
この屋敷内で
天上生活に慣れ
そしてソーディアン・マスターになるため
…訓練も兼ねて、リオンと寝食を共にする事となったのだ
「トイレはここだ。風呂は簡素なものが部屋に付いてはいるが…大浴場の方がいいだろう。それはまた案内してやる」
「……うん」
テキパキと室内の設備を説明して回るリオンのピンクのマントの後を付いて行きつつ、スタンは困ったように口元を引きつらせる
簡素な…とリオンは言うが、どう見たって地上の家よりもはるかに豪華で綺麗で…
「俺…何かぜーたくだなぁ…」
想像していたものとは180度違う自分の立場にスタンは嬉しい反面、不安も大きく膨らませていった
◆◇◆◇◆
「―…それで、だ。一週間ほどしてお前の状態が落ち着いたと判断出来れば、お前の使うソーディアンと対面させてやろう」
「え…?シャルティエ…は違うのか?」
室内の説明を聞き終え、あてがわれた大きなフカフカのベッドにダイブしたスタンは、かけられた言葉に首を捻ると、身を起こして正座する
「…シャルのマスターは僕だ」
『この屋敷内には、僕以外にあと3本のソーディアンがいます。そのうち1本にも、すでにマスターはいますけどね』
リオンの腰元でシャルティエがあっけらかんと告げた内容
それに再びスタンは『うげっ』と息を詰まらせた
「それって、ほとんど全部のソーディアンが集まってるんじゃないか!リオンの家って凄いとこだね…」
ソーディアンなんて天地戦争の遺産で、しかもそれが集結しているだけではなく、マスターまでもが集まっていて…
「もう1人のマスターっていうのは、ハロルドの事なのか?」
「いや、違う。ハロルドはあくまでもソーディアンの開発者だ。マスターではない。…そのマスターは今は役目のため屋敷にはいないが…近々お前も会うだろう」
どことなくうんざりした様子で嘆息するリオンが、肩を落としながら天を仰ぐ
そんな様に、そのマスターが誰であるのか知っているシャルティエの苦笑が響いて
「………」
ジロリとリオンに睨みつけられてしまい、慌てて話を反らすようにシャルティエはさらに言葉を続けた
『スタンさんがマスターになるとすれば…彼の、でしょうね』
「そうだな…馬鹿なりに力もありそうだしな。それにしても…アイツにもいい加減協力してもらいたいものだが…」
「…?」
バカと言われた事が多少引っ掛かるのだが、何だか自分のわからない話をされてしまい、ついついスタンは頬を膨らませてしまう
だが、その他に関しても自分は知らない事ばかりだと思い直し、とりあえず拗ねた表情はそのままに口を開いてみた
「その…何かそんなに扱いにくいソーディアンなの?俺、戦いに関しても素人だから大丈夫かな…」
「いや。扱い難いのは剣としてではなく、むしろ中身だ」
剣術に関しては僕が教える
だが大切なのはそれだけではない
ソーディアン・マスターになるからには、ソーディアンとの意思の疎通も重要な事なのだが…
『彼は今―…誰とも口をきかないんです』
多少沈んだシャルティエの言葉
意思を持つ剣…
そのソーディアンが自我を棄てようとしている
…それが意味する事とは何なのか
「なん…で?」
『―…悔いているのだと思います、彼なりに…。自分達のオリジナルである…マスターを守れなかった事。それから…』
―…恋人をも死なせてしまった事を
「…………」
武器は2つの意味を持つ
他人を傷つけ、死に至らしめる道具
そして
他人を守り、平和を掴むための道具…
きっとそのソーディアンの彼は、後者になる事を望んだのだろう
地上軍と共に戦い、恋人の…果てには地上の人々の安息を手にするため
だが、それが―…
出来なかったのだ