頂き&捧げ小説☆
□恋シテマスカ
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何故か日々、苛々している様子の坊っちゃん
…その理由に、僕はとっくに気付いてますけどね
考えてみて下さい
一体何を対象にして、そんなにイラついてしまうのかを
気付いて下さい
坊っちゃんが常に、無意識ながら目で追っている人物の事を
感じて下さい
果たしていつも感じているソレは、苛立ちの感情だけなのですか?
それに気付けば、答えはおのずと出てくるはずなんですけど…
…ねぇ?
坊っちゃん?
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「―…虎牙破斬っ!」
…あぁもう
ほら、今だってイライラしてますよね
今の状況はストレイライズ神殿で神の眼喪失を知り、ダリルシェイドへとグレバムの足取りを探るために戻る途中
アルメイダ近辺で戦闘の真っ最中
そして、酷く荒い動きでモンスターを倒しているリオンの手に握られたシャルティエは、そんなマスターの荒れた様に深い溜め息を吐いたのだった
「……二度と会う事もないだろう!」
『お疲れ様です、坊っちゃん』
ボアを仕止めた際に付着した血を振り払い、そのままシャルティエを素早く鞘に入れたリオンは、不機嫌極まりない仏頂面で背後に視線を移す
その少し離れた先では…
「フィリア、大丈夫か?」
「は…はい」
「アンタねぇ…ちょっとフィリアの事構いすぎなんじゃないの!?」
「でもフィリアは戦い方を知らないんだ。そう怒るな、ルーティ」
スタン、フィリア、ルーティ、マリーの4人が仲良く寄り添ってワイワイと騒ぎ合っているのである
リオン一人を前衛で戦わせて、だ
「………っ」
あ…
また苛つき度が増しましたね…?
そんなパーティメンバーにリオンがサッサと踵を返して歩き出すと、背後から慌てたように追いかけてくる足音が聞こえ…
無意識にリオンの表情が少し和らいだ気がした
「リオン!」
「……何か用か」
ふわふわと金髪を揺らして隣に並んで来たスタンを横目で見れば、ニッコリと微笑んでくれる穏やかな表情
…何故だろう
それだけで棘ついた気持ちが晴れてゆくようだ
「やっぱリオンてば強いよな。俺、安心してフィリアを後ろで守ってられるよ」
……前言撤回
やっぱりムカついてきたぞ…
「僕一人に任せて、貴様は呑気に女に囲まれている。…いい身分だな」
「え?」
つい、厭味口調になってしまったのは仕方ないだろう
ムスッとしたままそう言えばスタンは不思議そうに小首を傾け、暫く空を見て悩んだかと思えば…
「……フィリアを護りたいのか?」
「違う!」
的外れもいいところな返事を返され、リオンの苛立ちが最高潮に達する
「大体貴様は何を勝手な行動をしているんだ!僕に全てを任せ、戦いもせずに女の心配だと!?そんなもの、ルーティとマリーに任せておけばいいんだ!」
「で…でもさ……やっぱり女性だけで固めておくのも危ないだろ?」
「この程度の雑魚モンスターしかいない場所で、何が危険だ!第一、フィリアは敵と内通していないと完全に証明されたわけでもない!足手まといを甘やかすな!」
その言葉に少し遅れて着いてきているフィリアの肩が震えたが、そんな事、リオンにはどうでもよかった
問題なのは隣にいるスタンなのだから
「…ナイト気取りもいい加減にしろ」
こんな事なら、フィリアを連れてこなければよかったとリオンは一瞬考えた
だが、グレバムの顔を知らない自分達では追跡にも無理がある
だから連れてきたのだけれど―…
正体のわからない苛立ちが確実に増した気がする
「貴様の技量など、まだ未熟だ。愚かな事を考えるより先に、少しはマシな戦い方が出来るよう努めろ」
そうだ、戦え
そんな女を護ってなどいないで
「そうは言ってもさ…」
「うるさい!とにかくお前は僕の―…っ!」
側で共に戦っていろ
僕から離れるな
続けて怒鳴りそうになった言葉を、リオンは慌てて口を閉ざす事で何とか飲み込んだ
今…僕は何を言おうとした?
…側にいろ?
離れるな…?
何故、僕はそんな妙な事を…?
「リオンの?」
「ぼ…僕の…」
不意に途切れた言葉の続きをスタンが促してくるが、そんなものに応えられるはずがない
今、何を思ったかなんて、自分ですら理解していないのに
「僕のっ…言う事に従っていればいいんだ!わかったか!」
「………」
そう怒鳴られて落ち込んだ様子のスタンが可愛いだなんて
リオンは思わなかった事にした