Tales of Rebell
□〜相棒〜
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〜相棒〜
―…ずっと…待っていたのかもしれぬな
先の見えぬ暗闇を照らす光を
再び我に戦う意思を与えてくれる強さを
そして、そのためには…
―…来るがいい
我がマスターよ…
我にふさわしい者か、見極めてやろう
◆◇◆◇◆
「もしかして俺―…かなりピンチだったりするのかな?」
ヒンヤリした印象を受ける薄暗い通路をひたすら突き進みながら、スタンは泣き出しそうに表情を歪め…
この状況を打破したくとも出来ない自らへ、叱咤の意味も込めて小さく独り言を発したのだった
―…事の発端は、軽い好奇心から
普段はリオンと共に剣術の基本型やソーディアンマスターの何たるかを教授されたり
ハロルドの怪しい実験の助手―…もとい、実験体にされたり云々と
それなりに忙しいというか大変な生活を、天上世界で始めていたスタンだったのだが
その生活が5日目に入った今日は、それが少し違った
何せ天上世界一番の大企業である『オベロン社』
そこの若き社長を務めるリオンは、実はかなり多忙だったりする
開発部がどうとか
新製品がどうとか…
何処ぞの支社が何だかんだとか
打ち合わせが―…
等々
分単位で刻まれていそうなスケジュールをこなすべく出て行ったようで、朝からその姿は影も形も見当たらず、代わりに、本日の『ソーディアンマスター育成講座(仮)』はハロルドの手に委ねられたのだが…
「あー、ごめん。ちょっちパスだわ」
…と
当のハロルドも『どうしても手の離せない研究』とやらが出来たらしく…
「アンタは勝手に屋敷の探索でもしててちょうだい」
そう軽く言い放たれ、研究室を追い出されてしまったのだ
…外出は許されていないため、仕方なしに自室で大人しくするか、メイドさん達のお手伝いでもしていようとスタンが踵を返しかけたその時
「あれ…?」
ここ数日では全く見た事のない扉―…おそらくは隠し扉であろう…が、ハロルドの研究室のすぐ隣で控え目にその口を開いていたのである
「…何だろ…ここ」
取っ手もドアノブも勿論ない、壁に僅かに空いている空間
うっかり閉じてしまわないように指先を引っ掛けると、そぉっと力を込めて隙間を開き―…
「…ついつい入っちゃったのがダメだったんだよな」
覗き込んだ先には、仄かな灯りに照らされた通路が続いており、一体その先には何があるというのか
…子供の心のまま身体だけが成長したスタンの興味を引くには、それだけで充分だった
「そしたらいきなり扉が閉まっちゃうんだよなぁ…」
扉をくぐった途端に、外界と完全に隔離するかのような勢いを持って、扉が閉じてしまったのである
さすが隠し扉なだけあって何やら仕掛けがあるのか、押しても叩いても叫んでみても反応はなく、ボタンやカードを通すスリットも隠されているのか見当たらない
…見当たったところでスタンにはどうしようもないだろうけど
ハロルドが気付いて来てはくれないだろうかとも考えたが、いかんせん望みは薄い
―…仕方なしに救出は諦め、通路の奥へと歩き出し…現在に至るのだ
「これで出られなかったらどうしようなぁ。多分俺がいなくなった事は誰かが気付いてくれるとは思うんだけど……リオンにたっぷり怒られそうだし…」
『余計な事はするな』とリオンの口が酸っぱくなるまで、そしてスタンの耳にタコが出来るまで普段から散々言われていたのだ
「せめてリオンが帰ってくるまでに出れたら―…え?」
次第に地下へと潜っていくのか、緩やかな傾斜が続いていた暗くて幅の狭い廊下
だが、そこが唐突に終わり
代わりに現れたのは―…
「何だ―…ここ…?すごい…」
幾つものランプの炎に照らされ、威圧的な…まるで圧迫されているような感触を受ける空間
何本かの太い柱が半球の天上を支え、重々しい雰囲気と、地下にあるため僅かに淀んでいる空気
「…神殿…みたいだ…」
どことなく神聖さを感じるが…逆に牢のようなカビ臭さも伺える
一体―…ここは何なのか
何のための場所で
何がここにあるのか
「…あれ?」
思う存分走り回れそうなスペースの向こうに見えたのは、レンガを重ねて作られている階段
…その上で何かがキラリと一瞬光ったのだ
「出口!?―…うわあぁっ!?」
一筋の光明が見えた気がして、何も考えずに駆け出したスタンは、次に起こった出来事に叫びつつ飛び上がってしう羽目に
ガラガラ―…
ガシャン!!
…陥ってしまった