Tales of Rebell

□〜相棒〜
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「………」

『おい、そこのお前!我の話を聞いているのか!?』

「ディム…ロス…」

『だから私の質問にだな―…!』

「ディムロスー!」

『どわあぁぁぁっ!?』

何やら呆然としていたかと思えば、急に笑顔になって大声を上げたスタンはディムロスのいる台座に飛び付き、嬉しくてしょうがないといった様子で台座ごとガクガクとディムロスを振り回し始めた

「俺っ!俺はスタン!スタン・エルロン!よろしくなディムロス!」

『まっ、まっ、待たぬかぁぁぁ〜!!』

ガチャガチャと鎖が擦れて盛大な音を立てている
だが、スタンはそんな事はお構いなしのまま、ますます笑顔になって言葉を続けて―…
もしこれでディムロスが鞘にでも入っていたなら、頬擦りでもしかねない喜び様だ

「俺、お前のマスターになるんだって!相棒なんだってさ!だからよろしくな!仲良くしてくれよ!」

『…マスター…だと?』

「ぇ…?」

急に幾つもトーンが下がったディムロスの声
低くて、不機嫌そうで…思わず喜びに暴走していたスタンの腕も止まってしまった

「ディムロス?」

『………』

反応なし

「なぁ…ディムロスってば」

『……………』

やはり応答なし

…そういやリオン達が言ってたっけ
『誰とも話をしたがらない』って…

「ディムロスー」

『………』

むぅ
完全無視かよ

さすがのスタンでさえ、ムッときた
だから唇を尖らせたまま体勢を変え、ディムロスの前に胡座をかいてどっかりと腰を下ろしてから―…

こう告げた

「…古臭い剣」

『古臭いと言うなぁぁぁぁぁっ!!』

即座に叫ばれた反論の言葉に、たまらずスタンは声を上げて笑う

「お前って結構可愛いとこあるんだな!」

『かっ…可愛い〜!?馬鹿な事を言うな!古臭い発言と共に撤回しろ!』

…もし本当に話をしたくないのなら、反論なんてしてこなくていいのだ
それに『古臭い』と言われて、怒る必要もないはず

だけど彼は喋ってくれた
怒って叫んだりもしている

誇りを捨てているわけではない
死ぬ事を欲しているわけじゃない
彼はまだ―…地上軍最終兵器である『ソーディアン』

『ソーディアン・ディムロス』だ


「なぁ、ディムロス」

『……何用だ、人間』

うぅ…
まだ微妙に言葉にトゲがあるよーな…

スタンの『古臭い』と『可愛い』発言に相当ヘソを曲げてしまっているのか、呼びかけてみればぶっきらぼうな返答が返ってきてしまう
思わず乾いた笑いを洩らしてしまうスタンだったが、先程までとは違う状況に柔らかく瞳を細める

…返事をしてくれた

自らの呼びかけに、明確な意思を向けてくれたのだ
嬉しくないはずがない

「俺、お前と話せて凄く嬉しいんだ。リオンとシャルティエみたいに、一緒にいれたらいいなって思う。だからさ…俺をお前の相棒に―…」

『一つ、聞かせるがいい。貴様は何のために我を欲する。…何故マスターになりたがる』

「何故…って…」

言葉を遮られた事はどうでもいい
ただ、ディムロスがどうしてこんな事を尋ねるのか、スタンはわからないでいる

「何でって、地上を取り戻すために決まってるだろ?天上人も地上人も仲良く出来たら、それが一番なんだろーけど」

『……何も聞いてはいないのか?』

「聞く?天地戦争とかハロルドについてなら聞いたけど…」

それとはまた違う事なのか?

そう尋ねてみれば、返ってくるのは深い深い溜め息
何となく居心地が悪くて、床は石畳だが胡座から正座に切り替えてスタンは座り直す

そして、それを待っていたかのようにディムロスの口が再び開かれた

『地上を解放する。それが何を意味するのか、そのためには何をしなければならぬのか…お前はそれを理解しているのかと聞いているのだ』

「…それは……戦わなきゃ…」

そうだ
地上を解放するためには戦わなければならない
だが…

何と?

一体誰と戦う?


「……?―…ぁっ!」

ぶわっと冷や汗が出た
指先がじわじわと冷たくなってゆく

『…そう。地上解放の一番の妨げは天王ミクトラン』

ディムロスの声ですら、今は酷く遠く聞こえて

『ソーディアン・マスターを集め、地上のために戦う。まさにそれは―…』

言わないで

そんな事考えてもなかったのに

『天地戦争の再来だと思わぬか…?』

今度こそ完全に

スタンは沈黙してしまった
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