Tales of Rebell
□〜家族〜
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防御の構えのまま、微動だにせずリオンはこちらを睨み付けている
そんな姿からスタンも視線を逸らさずにいるが、ボソボソと何とかディムロスにだけ聞こえる声量で会話を続けていた
『まず、意識を我に集中させろ。イメージするのだ。自身が炎となる様を』
「…まさかとは思うんだけど…晶術を使うつもりなのか?いくら何でも危ないだろ!」
スライムを倒す時に出現した、巨大な炎の塊
ディムロスはアレを、リオンに対して使用するというのだ
『案ずるな。我らが晶術を使おうとする事は、向こう側も把握するはずだ。何せあちらにはシャルティエがいるのだからな』
「え…、だったらバレバレなんじゃ…?」
高密度のコアクリスタルに秘められた力を用いる晶術
ソーディアン同士ならば共鳴により、晶術を使用しようとするエネルギーの流れが感知出来るのである
だとすると、晶術をスタンが使おうとしている事は、シャルティエから伝わってしまい…
リオンの意表を突く事など出来やしないのではないか
『バレて構わぬ。むしろ我の狙いはそこだ。…あ奴はお前を侮って見ている。そこに我らは付け入るのだからな』
「……?」
ますますわけがわからないといった様子でスタンは首を捻るが、ディムロスは酷く生き生きとしているようで
…どうやら地上軍にいた際、中将として部下と共に訓練していた頃を思い出しているようだった
『さあ、スタン!集中しろ!』
「……分かった!」
戦術も戦法も、どれに関してもまだスタンは未熟でしかない
自分の戦闘スタイルを確立するためには様々な知識を得、あらゆる状況に直面する必要がある
…今、俺に出来る事は、ディムロスなりの戦い方を学ぶ事だ
スタンはそう考えると、ディムロスの指示に従って意識を集中し始めた
『…坊っちゃん。ディムロス達は晶術を使用するつもりですよ。晶力が集まってきています』
「晶術?…ファイアボールか」
確かに、『訓練時に晶術を使うな』とは言っていなかった
かといってスタンが、攻撃に晶術を使おうなどと一人で思い付くはずもなく…
なので、無闇に切りかかったところでリオンから反撃を受けると考えたディムロスからの入れ知恵に違いない
そう判断したリオンは、素早く反撃の作戦を組み立て出す
…とは言っても、悩む必要もない程に簡単なものなのだけど…
「ファイアボールは一直線に飛ぶものだからな。初弾さえかわしてしまえば、あとはスタンの動きを見切るだけでいい」
フン…と鼻で笑ってから、瞬時に晶術に対応出来るよう僅かに重心を落として膝を曲げる
…例えディムロスが他に何か余計な入れ知恵をしていようとも、ファイアボールさえ避けてしまえば、その後のスタンの剣技などまだまだ恐るるに足りない
…晶術を使ったからといって、僕に勝てると思うな
―…一瞬で勝負をつけてやろう!
「…………」
「………っ」
そして互いに緊張を保ったまま、時間にすると僅かな刻が過ぎた頃―…
『―…スタン、今だっ!』
『―…坊っちゃん!来ます!』
晶力の大きな流れが一点に集中したのを受け、ディムロスとシャルティエの双方がマスターに向かい叫ぶ
そしてスタンとリオンも、同時にアクションを起こしていた
「ファイア―…!」
「遅いっ!」
力強く地を蹴ると持ち味の素早さを活かし、リオンはスタンへ向かって駆け出すと、一気に間合いを詰めてゆく
このスピードで走るリオンにファイアボールを当てる事は、至難の技だろう
そしてスタンとの距離は、あと5mほどまでに迫っていた
もう、誰にもリオンの足を止める事は出来ないでいる
「―…終わりだ!」
もしかすると、晶術が発動しる前にカタがつくかもしれない
リオンとシャルティエが、そう揺るぎない勝利を確信した
その時―…!
「―…ウォールっ!!」
「!?何だとっ!?」
高らかにスタンが解き放った、ソーディアンに秘められた力
しかし力ある言葉と共にそこに現れたのは炎の塊…『ファイアボール』ではなく
「ぅわ―…っ!な…何だコレぇっ!?」
晶術を使ったスタン本人も驚くような、渦巻く炎の壁
それがスタンを護るかのように足元から出現し、真っ赤な姿を惜しげもなく晒している
そして肉薄していたリオンを拒んでいるのか…
近付くもの全てを焼き尽くすために、激しく燃え盛っているのだった