TOG‐テイルズオブグレイセス‐
□07
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――遠い日の思ひで。再び、雨の中で。
_07
アスベル、ソフィ、ルマ一行はバロニアの連絡港へと向かっていた。
アスベルとソフィは、急に立ち止まる。
目の前には、小屋があった。
「…。」
アスベルは、うつむいている。
なぜか、悲しく悔しそうで何かを引きずっているような顔。
私は、まだアスベルの事全然知らない。
ついていって、支えになるのかな。
足引っ張らないかな…。
「俺は、またたくさんの大切なものを守れないのか…。」
『アスベル…。』
ソフィと私は、アスベルを見つめる。
「…守る…。」
ソフィは、自分の胸に手を当てて、呟いた。
「ははっ…。そう言えば、七年前もここで、そんなことを言ってたかな…。」
『七年前…?』
「あぁ。七年前、ソフィとそこの小屋まで競争して、先についた方が相手を守り通す。そんな約束をしたんだ。結局、俺は抜かされて負けちゃったんだけど…。けど…。なのに…っ。」
――― ポツポツ。サァアァァ
雨。
雨が降るのと共に、アスベルは
自らを支える力を失い、崩れた
。
「俺は…っ!何一つ、何一つ変わりやしない!七年経った今も…。守ろうと思ったものを…。守ることが出来ないんだ…っ。あっ。うわ゛ぁああっ!!」
――ポン。
ソフィの、小さいけれども暖かい手が、アスベルの頭を撫でた。
『アスベル…。』
ルマは、アスベルの冷たく冷えきった手を握って、微笑む。
『寒いから、暖まろう?あの小屋で。』
「あぁ…。そうだな。」
アスベルも、ルマとソフィを見て、微笑んだ。
[とある小屋]
私たちは、雨でびしょびしょ。
このままだと、風をひいてしまうと暖をとっていた。
『ックシッ!!』
部屋中に、ルマの小さなくしゃみが響く。
「大丈夫か?」
『ぅん。平気。ソフィは大丈夫?』
「うん。」
実際、私は大丈夫じゃない。
超寒い。
この前の、海辺の洞窟であった出来事を思い出していた。
(ぁ…。また透けちゃってる…。どーしよ。)
つい、チラチラとアスベルの様子をうかがってしまう。
「ん?どうしたんだ?」
やばっ!
『ふぇ!こ、こっちみないでぇっ!』
「え?」
アスベルは口をポカンとさせる。
「?ルマ、どうしたの?」
ソフィは、心配してこっちに駆け寄る。
「ルマ…??」
ソフィは、まだ状況をつかめていない。
―が、アスベルは…。
アスベルは自分の顔が熱くなるのを覚えた。
「ぁ、いやっ!その…。ごめ、けしてそんな…こ、と…。」
『アスベル…?』
アスベルの様子がおかしい。
ルマは、とっさにアスベルに駆け寄った。(服が透けてるのを忘れて。)
ソフィもアスベルに駆け寄り、頭をさわっている。
「頭…。あつい。」
『大変。風邪をひいたのかな…。熱が出てる。』
ルマは、とりあえず、濡れた上着を脱がせ、その辺に置いてあった毛布をアスベルにかけた。
――刹那。
『うぁあっ!?』
――トサッ
ルマは、アスベルの上に重なった体勢になってしまった。
アスベルの鼓動が身体に伝わってくる。
――トクン。トクン。
心地が良い気がした。
ほんの数秒の出来事だった。
「み…、水。」
『ぇ…。水?水が欲しいのね?』
「水、とってくる!」
ソフィは、急いで水をとりに小屋を飛び出していった。
『アスベル…。すごい汗。』
アスベルの汗を拭う。
私は、自分ができる限りの事をした。
――数分後。
ソフィはまだ帰ってこない。
少し遅いと思い、ルマは外の様子を見に行こうとした。
だが、今アスベルを一人にすることは出来ない。
『どうしよう…。ソフィ、大丈夫かな…。』
「だめ!来ちゃだめっ!」
『ソフィ…?』
扉の向こうで、ソフィの声がする。
私は、けたたましい雨にうたれる扉を開いた。
_07・終
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