鋼/連載罪と恋の狭間で

□序章
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序章






真夜中

月明かりも無く空も全て、空気さえも黒く塗り潰されたような夜。

そんな闇に沈んだ裏通りを見下ろすさびれ、くすんだビルの上。



一人、闇に溶け込むように黒いコートに身を包んだ少年がいた。

その少年が握るは、その小柄な体に不釣り合いな銀色のライフル。



少年はやがて膝をつきその愛用ライフルを静かに肩にかつぐ。

遥かビルの下に表れた今日の¨標的(ターゲット)¨に向けて、彼は無言で銃口を向ける。


風が強い。

彼の漆黒のコートがなびく。


ばさり、と少年の髪がコートの下から姿を現した。


風になびくそれは



金色。


すぅ─…とスコープごしに同じ金の目が細くなる。


途端に、

風が消えた。
まるで計ったかのように。

金と黒の少年はまるで風が止まるのをわかっていたかのように、

少しの躊躇もなく

引き金をひいた。















サイレンサーつきのライフルは無音。

その無音のなか、確かに一つの命が消えた。


外す事はない。

躊躇もない。

そこに感情もない。

ただ、示された標的を的確に消すだけ。


悪いね、と少年はライフルをケースにしまいながら呟いた。



戻ってきた風に金色の髪がなびく。

少年は縛っていない金色の髪を隠すように、深くフードを被る。


そしてコートの中にライフルを隠すと

こつり、というブーツの音と共に少年はビルから姿を消した。

そして狙撃場として使われたビルの屋上は、また何も無かったかのように静けさを取り戻していた。







少年のコードはsniperNo.002。

英語と数字で作られた名前のコードはただ指令の通りに命を奪う事に戸惑いがない。


今世間を騒がせる闇組織『F.I.N』の

二番手プロスナイパーである。









夜はまだ明けない。

闇をまとう一人の少年をかばうように。

彼の過去を隠すように。

彼の心を映し出すように。

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