〜紅眼の堕天使〜

□壱
1ページ/10ページ








私が生まれる前…突如江戸に降り立った異人“天人”…。

彼等は“宇宙”という道なる空間から我が星である地球にやって来たという…。

そして、彼等天人の台頭により侍が衰退の一途を辿っていった。





ーーーーーーーーーーーーーー・・・




『埋蔵ー!』

「ひ、姫さま!御勘弁を爺やはもう年にございますぞ!」

『年を理由に現実から目を背けるから年に負けちゃうんだっ!埋蔵!』


幼子は屈託無く笑い家臣の名を呼び、埋蔵と呼ばれた老人は幼子とともに庭を走り回っていた。美しい真紅の髪をした幼子は、この国の御上"徳川"の名をもつ一国の姫であった。
美しい着物、髪飾り、それらが陽の光を浴び煌びやかに光り輝いていた。
そんな幼子を見つめる視線が一つ。不気味な視線を放ち口角を上げ怪しく笑みを浮かべていた。


「燈影あまり埋蔵を困らすでないぞ」


人とは思えぬほどの冷徹な目、笑みを浮かべているのに酷く寒気が走り幼子、燈影は怯えていた。
彼が何をしていたかは知り得ないはずだが、子供故にその断片的な雰囲気は読み取れていた。
定々の放つ雰囲気は燈影にとって苦手以外の何物でもなかった。


「さ、定々さま!」

『おじ上さま…』


突然の定々の登場に、先程までの陽気な雰囲気は消え失せ、静寂が邸内を支配していた。
定々は廊下から燈影を見下ろし、ニタリと笑うとゆっくりと口を開いた。


「舞蔵、例の件燈影を任に着かせることにした。」

「?!さ、左様でございますか!ですが定々様姫さまはっ…」

「燈影にだからこそできることがあるであろう?徳川家であるからにはその任、幼子であろうが女子であろうが関係のないことだ」


やはり上辺に貼り付けた笑みで笑いかけた定々に、舞蔵はそれ以上は何も言葉を発することができなかった。
否、何も言わせまいと定々は言葉を続けた。


「楽しみであるぞ燈影、早く私の下で可憐に舞っておくれ」


定々の言葉に、小さな肩が微かに震えていた。
幼い彼女には、その言葉の意味は分かり得なかったが
大好きな家臣である舞蔵を苦しめる程の事であることはすぐに理解できていた。
不安になった彼女は舞蔵の着物の袖を小さな手で掴み不安に心を支配されていた。
定々が廊下を歩き去っていった後、燈影は舞蔵に訪ねた。


『わたし、何を任されたの?舞蔵』


ポツリと呟かれた燈影の言葉に、舞蔵は苦虫をつぶすような表情をしていた。
何と話すべきか、話さざるべきか。舞蔵は考えあぐねていた。
が、意を決したのか、舞蔵は燈影と同じ目線に腰を落とし話し始めた。


「姫さまはとても賢くそして強く美しい心を持っておられる。
だからこそ、姫さまはこの試練必ずや乗り越えられると爺やは思うております。
負けてはなりませんぞ、爺やは最後まで貴方様を御守りいたします。この老いぼれの命に代えても。」


舞蔵の目を見、燈影は事の大きさを実感していた。
ただ分かったのは、自分に何か命を受けたということと、この先自分自身に降りかかるであろう出来事に燈影は一抹の不安を抱いていた。
そのころ、国は鎖国解禁の話が持ち上がり遥か上空に広がる宇宙から押し寄せる強大な敵に目を付けられていた。









次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ