オタク心満載のトラッカー達

□第一代目 作戦開始
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 「所定の場所において参りました」
その部下の言葉を聞き、ご苦労と声をかけるとウツシは後ろは控えているいかにも他国の顔立ちの男に問いかけた。
 「ジョサン…そなたのその術で異空間へあいつらを飛ばせるのか」
 ジョサンと呼ばれた男は華の刺繍が入った濃緑の着物を羽織り、大きい鼻、形も色も薄い唇、そして垂れ下がった細い目をしている。
 「私の師は国で最も優れた呪術師。そんな師の最高傑作の術ですから」
 「なんという異空間に行くのだ?」
 静かな笑みを浮かべジョサンは答えた。
 「空間の名前は存じませんがどうも[ニッポン]という国だそうです。伝記にそう記されていました。」
 そうか楽しみだ、と言うと部下の方へ踵を返すと得意の目力と太い声で訴えかけた。
 「よく聞け。先刻説明したとおり今回の標的は王獣とかいう獣を操る女がいるということで、わが国にはこのリョザ神王国を奪うには邪魔な存在…。
という事で例の女エリンと夫、そして息子の三人が標的だ…って」
 言いながら振り向いた先には標的の一人、エリンの息子が此方へ走って来ていた。ウツシは慌てながら言った。
 
 「罠に気付くのが意外と早かったな…。まあ〜作戦開始だ。失敗は許されんぞ、皆の者」



 ジェシは自分達のいた丘の下にある森で何かが光ったと言って、その場所へ颯爽と行ってしまった。その小さな勇者を見ながら夫のイアルと一緒にその背中を歩いて追った。
 あった!とジェシは光った正体を上げて見せた。丸い円盤であった。小さな体には堪えたのだろう。上がったがすぐ下がった。
 二人が近寄ると疲れた子犬のようにジェシは舌を出しエリンに渡した。
 外側から青、茶色、銀色の金属であった。茶色の所には文字が書いてあった。
 (殺気は無いが誰か大人数に見られている感じが)
 イアルは密かに感じたが気のせいかと円盤の文字を読もうとした瞬間、文字が光った。そしてエリン達は光に包まれた。
 エリンは後ろを振り返った。リランがこっちに走ってくる。

 光が消えるとそこには誰も居なかった。


遠くで王獣の鳴き声が聞こえた。


→後書き
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