ヘタリア

□お人形さん
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「ほんま、名無しさんは可愛えなぁ」

アントーニョは名無しさんの髪の毛をくしで梳かしながら言った。


「お人形さんみたいやんなぁ」
「・・・」


当の名無しさんは大人しくアントーニョの言葉を聞いている。


「ロディなんて大人しく座っててくれへんもん」
「アントーニョが面倒くさいんじゃない?」
「そないな事ないやろ」


いやいや、それしか無いでしょ。
どれだけ自分が面倒くさいのか知らないの?


「・・・ナイロン?」
「え?」
「ポリエチレン?」
「はい?」
「名無しさんの髪の毛」
「そんなワケないじゃん」
「何不機嫌なっとんねん」


頬を膨らまして目を合わせない名無しさんを覗きこんで、アントーニョは名無しさんのほっぺを突いた。


「そんな顔しとると幸せ逃げてまうよ」
「そんな事くらいで逃げないよ」
「チュロス食うか?」
「・・・食べる」
「ちゃんとトマトソースつけるんよー」
「今日はチョコがいい」
「そんなトマト好きなんか、トマトも照れてまうわーもっと真っ赤になっちゃうやん」
「いや、トマトじゃなくてチョコです。聞き間違えもいい加減にしてください」


名無しさんの願いは虚しく、チョコではなくトマトソースが出てきた。
今日はトマトの気分じゃないと渋っていると、アントーニョが名無しさんを膝に置いた。


「何でしょうか」
「名無しさんはお人形さんやから」
「え?」
「俺が食べさしたるわー」
「え、いいですいいです!自分で食べれます」


名無しさんの事なんてお構いなしで、アントーニョはもう既に食べさせる用意をしている。


「1回やってみたかったん。名無しさんに食べさすの」
「しなくていいよ」


後ろからアントーニョの息遣いが聞こえて、温かい身体がくっついてて、幸せすぎて死にそうだった。


「はい、あーん」
「・・・」
「口開けろや」
「・・・」
「・・・顔トマトみたいになっとるで」
「・・・」
「お人形さん、口開けてーな」
「・・・開けへんよ」
「何でスペイン語なん?」
「・・・知らへんよ」
「可愛えなぁ」
「・・・バカ」








お人形さん
「とりあえず、口開けろや」
「・・・開いてるよ」
「それじゃチュロス入らんわ」
「入れなくていいよ」
「声小さい、聞こえへん、口もっと開けんと聞こえへん」
「・・・バーカ・・・」

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