ヘタリア

□おれさま日記
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今日はギルの家を掃除しとく予定だった。
ビールを飲んでくるとか何とか言ってたなー。


私は、普段は掃除をしたくてもさせてもらえないギルの部屋を掃除する事に決めた。
つーか、そんなに拒まれると何かがある感じがするんですけど。





そして、案の定。


「何これぇ」


私はギルの枕の下から一冊の本を取った。
題名:「おれさま日記」。


バカかコイツ。
心の底からそう思った。
結構分厚くて、見てはいけないと分かっていても見てしまいたくなった。


《7月12日  晴れ

今日もおれさまがカッコよかった。》


あぁ、やっぱこの子バカなんだ。


《でも今日は色々あった。
ここでは書ききれない。》


書ききれよ。
何のための日記だし。


名無しさんは楽しくなって、掃除を放って日記帳を読み始めた。


《7月20日  晴れ

さすがおれさま。カッコよすぎた一日だった。

しかし、どうも最近アイツの事が気になって仕方がない。
誰なんだ?》


ん?
誰なんだ?

名無しさんは軽く不審の念を抱きつつ、ページをめくる。


《8月1日   曇り

何でおれさまはこんなにイケてるのか、悩み続けた一日だった。

今日始めてアイツと喋った。
見かけよりかサバサバしてていい奴だった。》



「へぇー、誰だろ」



《8月24日  晴れ

もう、おれさま最高。

今日はアイツから話しかけて来てくれた。
ビールの飲みすぎは身体に悪いだの何だの言われた。》



「世話焼きな子だなー」


名無しさんはニヨニヨしながら読み進めた。
もうギルの浮気疑惑とかどうでも良くなった。



《9月3日   雨

おれさま、雨の日は一際輝いたぜ。

今日は特に書くこともねぇ。
アイツと会えなかった事ぐらい。》


「・・・??」

何だか「アイツ」が、自分が知ってる人のような気がして、複雑な気持ちになった。


《10月26日 晴れ

おれさまは、誰もが認める美貌の持ち主だと思い知った一日だった。

今日は、よく分かんないけど名無しさんにカッコイイと言われた。
何かものすごい顔が熱かった。》


「へー、良かったじゃん・・・ん?」

自分の名前がある事に驚いた。


《11月11日 曇り

おれさま、もうマジかっこよすぎてヤバイ!

最近、名無しさんが遊びに来てくれる。
やっぱり良い奴だ。》



「・・・私だ」


《11月28日 晴れ

おれさまは天才だ。

今日は名無しさんのことを呼び捨てで呼んでいいと言われた。
実は影で呼んでたなんて言えない。》


「・・・」


《12月31日 晴れ

今年最後のおれさま。撮影許可だぜ。

実は気付いてたんだけど、気付かないフリしてた。
俺は名無しさんの事が好きだったんだな。
だから、名無しさんに言ってみたら》


ガチャッ。


「うっわぁぁ!!」
「うあああぁぁ!」


急に扉が開いて、ギルが入ってきた。


「は、お前俺の部屋で何してんだよ」
「え、いや・・・少し掃除を」
「掃除ぃ?あ、お前何持ってんだ?」


心臓が破裂しそうだった。
無駄だと分かっていてもとっさに、日記帳を背中の後ろに隠した。


「な、何でもないよ」
「・・・よこせ」
「え!何で?」
「見せろ」
「えぇ?コレもう片付けちゃうから」


ギルは自分の枕を持ち上げた。


「・・・おい」
「えぇと・・・」
「それ、俺のか?」
「あ・・・そうかも」


ギルは名無しさんを、頭の先からつま先までギロリと睨んだ。


「読んだか?」
「え」
「読んだのか?」


誤魔化したらもっと怒られそうだったから、素直に言う事にした。


「う、ん・・・」
「何で読むんだよ」
「だって、面白そうだったから・・・」
「日記って書いてあんじゃん」
「ごめん・・・」


しょぼくれて反省していると、ギルが名無しさんの手を引いた。
引き寄せられて、自然とギルの胸に収まる。


「え、ギル」
「どこまで?」
「え?」
「どこまで読んだ?」


ギルの顔はもう本当に真っ赤で、ビールで酔ってるとかそういうのじゃない。


「12月31日まで読みました・・・」


ギルは私の手から日記帳を取り上げた。
片手で器用にパラパラめくると、手を止めた。


「あ、ここか」
「そこだってまだ半分しか読んでなかったんだけど・・・」


ギルはポカッ、と本で名無しさんの頭を叩いた。


「お前さ、もしかして俺が浮気してるとか思ったんだろ」
「えっ?」
「途中まで呼び方”アイツ”だったもんな」
「ぅえ!?あ、いや・・・」
「まぁ別にいいけどよ」


ギルは静かに名無しさんを抱きしめた。


「名無しさんしか好きじゃないから安心しろ」
「・・・うん」


普段、言わないような言葉が聞けて少しだけ得した気分になった。









おれさま日記
「だから掃除させたくなかったんだよ」
「ねぇ」
「ん?」
「日記帳の続き見せてよ」
「・・・絶対ダメだ」
「えー、気になるー」
「うっせぇ」

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