DRRR!!

□何て楽しい宿題
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「君って本当に面白いよね」

臨也は薄く笑いながら言った。
全然面白いって感じの顔ではないんだけれど・・・。

「どういう意味?」
「え?だって、それ」

臨也は吹き出しながら私の目の前を指差した。
そこには自画像という美術の宿題があり、今まさに終わろうとしていた所だったのだが。

「全然君に似てないんだからさぁ、可笑しいったらないよ」
「なっ、そこまで言う!?結構自分的には力作よコレ!?」
「まぁ言っても名無しさんだしねー」
「ハァ!?」

ひどく自分の絵を馬鹿にされた私は、絵を裏返しにした。

「何何?描き直すの?どうするの?」
「うるさいなー、どっちだっていいでしょ」
「えー」
「大体どこが変なのよ、私の人生の中で一番上手く描けたわよ」
「ふーん」
「バランスだって悪くないし、確かに絵だからちょっと美化されてるかもしんないけど」
「そこだよ」
「え?」

臨也は勢いよく私を指差した。
何だそれ。

「何で実物以上に美化させるの?そんなの詐欺と一緒じゃない?」
「は、はぁ」
「いい?この絵を見たのが俺だったから良かったけど、名無しさんに会った事のない人が見たら、何て綺麗な人なんだろう!会ってみたいなぁ!とか思っちゃうわけ」
「いや、それは無いかと・・・というかどんなシチュエーション」
「シチュエーションとかはどうでもいいの、とにかくその人はそう思ったの」
「は、はい」
「でも実際会ってみたらどうだ!全然違うじゃないか!詐欺じゃないか!訴えてやる!・・・ってなるよ」
「いや、ならねーよ」
「なる」
「ならない」
「絶対なる」
「絶対ならない」
「絶対ならせる」
「絶対な・・・はい?」
「楽しいね」
「何が」

臨也はさっきより楽しそうに笑い出した。

「だって遠まわしにブサイクだって言われて怒ってる名無しさんって、見ててすごく楽しいよ!」
「・・・悪趣味か!」
「あー面白い・・・ねぇ、その絵俺が描き直してあげるよ」
「え、何で!?」
「だって俺の方が絶対上手いよ、それに楽しそうだし」
「ちょっとダメダメやめて!」

絵に伸ばした私の手よりも早く、臨也が絵をテーブルから滑らせた。
俊敏という言葉が一瞬頭を通過した。

「あー楽しい楽しい、とにかくこれは全部丁寧に消しとくね。良かったー鉛筆デッサンで」
「ね、ねぇ!本当にダメだって!明日までなんだからそれ!」
「うん。だから明日の朝までに出来上がってたらいいんでしょ?」
「・・・そうなっちゃいますかね」
「そうなっちゃいますねー」
「どうなっちゃうんでしょうか」
「夜なべして描くんでしょうねー」
「ねぇ臨也」
「何?」
「本当に、ウザイ」
「あはは、さすがだね」

臨也は綺麗に流すと、そのまま絵を部屋に持って行ってしまった。
もうオシマイだ。
臨也が美術できるなんて聞いたことないよ。
これでも中学から美術の成績は5をキープしているのに。
どうして、わざわざ・・・。
臨也なんかに。



=翌朝=

「ねー起きてよ名無しさん!出来た!」
「はー?何が・・・」
「ね、どうどう?俺的に力作なんだけど!」
「・・・え、何コレ!?」
「え。名無しさん」
「少女漫画!?え、つか超ウマッ!え、何か美術の趣旨とは違うけど絵ウマッ!!」
「でっしょー、ホラ早く準備して。そしてこれを提出・・・」
「それは、無理」

私が手の平を突きつけると、さっきまでキャピキャピしてた臨也がつまらなそうにする。

「何でさ、コレ出したら人気者だよ名無しさん」
「いやいや、別に人気者になりたいわけじゃ」
「あの駄作が美化120%だとすると、コレは美化1000%くらいなんじゃないかな。いい出来」
「あ、アンタが美化は良くないって言ったくせに!つかそんな美化したら原型なんてないじゃん!全然自画像じゃないよ!」
「うん、でも自信持って自画像ですって言えば自画像だから」
「何かただの現実見れてないナルシストみたいになるじゃん!?」
「いいから持って行きなって、成績はつくでしょ」
「成績はついても校内に展示されて・・・」

口が滑った。
言わなきゃよかった。

「校内展示?それは是非見に行きたいなー双眼鏡持って!」
「母校に堂々と入れないなら見ようとすんな」
「入れるよ?入れるけど入らないだけー」
「もう、意味が、分からない・・・」









何て楽しい宿題
「おかえり、絵の評判はどうだった?」
「・・・うん、とても上手だけど目がとてもキラキラしてるわねって言われた・・・」
「うん、だろうね。知ってたけど」
「見てたのかよ!」
「あはは、うん」

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