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□折原臨也の憂鬱
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桜が舞い散るその日、来神高校では入学式が行われていた。
新入生の顔には色濃く緊張がはりつき、友人を作ろうとぎこちなく周りの者に話しかける姿も目立つ。
そんななか、一人浮いた男子生徒がいた。
来神は制服を着用することを義務づけてはいない高校だが、普通入学式など正式な行事には指定の制服を着るものだ。
まぁちょこちょこ改造するのが関の山。
その集団にぽつんと、中学時代のものだろうか、黒い短ランの生徒がいた。
短い黒の学ランの前を開け、中に赤のTシャツという出で立ちは一見不良を連想させるが、髪は黒く眉目秀麗という言葉が似合う。
少し浮いた彼は整った顔で注目を集めるも、周りは遠巻きに彼を見ていた。
そんな中、その男に話しかける者が居た。
「やあ、臨也。僕らも高校生になったけど、なんだか代わり映えしないし正直興味ないんだよね。君はどうなの?楽しんでる?」
眼鏡で一見地味な男は、全く空気を読んでいない言葉を発した。
だが話し掛けられた彼は笑顔で返す。
「うん、そうだね、一所懸命に群れをつくろうとする姿は哀れみを通りこしていっそ尊敬にも値するよ。これだから人間は面白い」
「そうかもねえ。じゃ、僕らクラス違うから行くね」
少し的の外れた答えに突っ込むこともなく、眼鏡の彼はあっさり去っていった。
冷たくもとれる返答にも気分を害した様子はなく、男は口角をあげていた。
式が終わり、担任が簡単な説明をする。
次に行われるのはそう、自己紹介タイムだ。
出身中学はどこだの、部活はどこだの、趣味はなんだのと一人一人立ち上がる。
折原臨也はそれに個性を見出だし楽しんでいる。
人間は面白い。
臨也の苗字は折原なので、比較的早く順番が回ってきて席を立つ。
30余名の視線を集めながら彼は言った。
「俺は人間が好きです愛してます
だから宇宙人未来人違世界人超能力者なんかがいやがったら俺に関わらないでください
以上!」
皆がポカンと見つめる中、臨也はやり切った感満載の顔で席についた。