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□唇
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臭い。それだけで静雄の頭はノミ蟲でいっぱいになる。

憎い憎い憎い。死ね。

また池袋に来やがって…!


仕事中にも関わらず勝手にスタスタと歩きだす静雄にトムは制止の言葉をかけたが、彼の耳には届かない。

ドレッドヘアーはため息をつく。

「また折原臨也、か」


入り組んだ路地を迷わず目標に向かってただ歩く。
その様は肉食獣のようで、怯え道をあける人々。

彼らの表情にショックを受ける余裕もない。というか慣れてしまった。


臨也はもうこちらに気づき、逃げているのか?

なかなか本体に辿りつけない。
遠くなっていく感覚さえある。

くそ、車か?ぜってー逃がさねぇ…!

静雄は走り出した。


もう池袋の端っことさえ言える場所。
息は切れて荒い呼吸を繰り返す。
そこで静雄はやっと臨也の姿を見た。


周りを見回すとそこはいわゆるホテル街。


止まる高級車から出てくる漆黒の姿。


「おい、いざ…!」

必死に叫ぶ。

臨也は驚いたようにバーテン服姿の彼を見た。


そして悲しげに下がる眉。


静雄には見えた。
彼の唇が紡いだ言葉を。


そして、ふいとスーツ姿の男と街に消えた。



――アイシテル。

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