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□〇〇は風邪引かない
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「はいはい、何の用「遅いんだよバカ!!」

俺の声を遮って喚く来訪者。
買い物袋を手にしてむくれている。

「アーサー…?」
「朝からいくら電話しても出ねぇから来てやったんだよ」

感謝しろ、と言わんばかりの口ぶりに少し頬が緩んだ。

「もしかして心配してくれたのかい?」
「ばっ、違ぇよ!別にお前が心配で来た訳じゃないんだからな!勘違いすんな!!」

顔を真っ赤にして叫ぶのも可愛らしい。
素直になればもっと可愛いんだけどなぁ。

「上がって。ここじゃ寒いから」
「当たり前だろ!」

俺の頭をべし、と叩いて上がり込む。
一応俺病人なんだけど。


キッチン借りるから。お前は部屋で大人しく寝てろ。
俺を部屋に戻してアーサーは何かを作るらしい。
しばらくすると焦げ臭い匂いがしてきた。
…………まさかね。

「遠慮せずに食え」
「……………」

目の前に置かれた香りのいい紅茶……と炭。
正式に言えば炭になったスコーン。
アーサーが見舞いに来てくれたのか余計に具合悪くさせたいのかわからなくなってきた。

…スコーンはあの日以来ずっと食べてないから
味なんか忘れたよ。

「いただきます」

黒焦げのスコーンを手に取る。
意を決して一口かじってみた。

じゃり、という食感。
口に広がる苦味。
そのどれもが

「……懐かしい」
「ん?」
「え、あぁ、何でもないよ」

まだ君が兄で、俺が弟だった頃。
毎日のように食べてたのを思い出した。
自由を振りかざし君から離れてからは、見ることもなくなったから…
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